君を好きな理由
「女医さん大変だな~。そいつしつこいから」

偉そうに足を組みニヤニヤ笑いの磯村さんを睨み付け、何かを言いたそうに彼を見ている華子に気がつく。

たぶん、あの顔は心のなかで文句を言っている顔だ。

ちらりと視線を交わし合って、

「……人の事を言えねぇのは知ってるから」

「そうね」

以心伝心ですか、お二人さん。


「そういうの目に毒って言いますからね」

全く可愛いって言うか、安心したと言うか、寂しいと言うか。

華子とは小学生からの友達だ。

昔から自他共にキツイ性格の私だから、友達と呼べる人もほとんどいない。
そんな中でも、華子とは仲良くなった。

強迫観念に近い極度の潔癖症。

いじめの対象になっていた華子だけど、あまり泣くことがない彼女。

我慢はしていたみたいだけど、いじめを我慢していた訳じゃなく、自分の潔癖症を我慢していると気づいた時……

いじめていた子達を、思いきり蹴りつけて投げ飛ばした記憶がある。


それ以来の仲だから、色々と見守って……だいたいはからかってきたけれど。


これからは、私の手を離れるのね。


「娘を花嫁に出す父親の心境が解るわ」

呟いたとたんに、磯村さんに吹き出された。

「悪ぃな。娘を奪って」

「いいのよ。私は女ですからね。華子をそういう意味じゃ変えられなかったんだし」

そうね。

寂しいけれど、いつかはそんな日も来ることは知っていたし。
そうならなかったら華子にとっては良くない事だわ。

これで二度と会えない訳でもないし。


二度と会えないなんて……よくあることよ。
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