君を好きな理由
言いながらも、なんだか楽しくなってきた。

旅行なんて久し振り。

そもそも学会の付き添い以外で旅行になんて……高校の時の卒業旅行以来じゃないかしら?


うわ。何を着ていこう。

軽井沢は避暑地よね。

旅行用のシャンプーリンスは必須かな。

「泊まりよね」

「……泊まりですね」

「何泊?」

「一応、29日からと考えていましたから、GWいっぱいは大丈夫です」

「どんなものが必要?」

「ああ、大体のものは揃ってますが……先に連絡先を伺っても?」

「あ。そうかスマホはねー……」

言いかけた時、磯村さんが奇妙な顔をした。


「なに?」

「連絡先を交換する前に、付き合いはじめて、しかも旅行の相談って、なんかいろいろ順番がおかしくね?」

からかってくるなら、からかい返すわよ?

「貴方には言われたくないわよ?」

順番がおかしいのは解っている。

だけど、付き合い始めるより先に、濃厚なキスかました貴方には言われたくないわ。

磯村さんは渋面になって華子を見て、
華子はお弁当の後片付けをしながら、微かな愛想笑いを浮かべている。


まぁ、後は二人の世界に入ってくれるだろう。

こちらはこちらでスマホの連絡先を交換しながら、必要なものを簡単にリストに上げていく。


そんなやり取りがあった。



それから当日に葛西さんに迎えに来てもらって、軽井沢の顧問のコテージについたのがおやつの時間。

「思っていたより混んでいなかったわね」

桜材を使っているそうな、ロッジ風のコテージにを見上げながら笑う。

「はるかさんがスピード狂だとは思っても見ませんでした」

若干疲れた顔をしている葛西さんを見上げる。

途中、運転を変わってみた感想がそれらしい。

「やーねー。行けないときには無理はしないわよ」

GW中は警察も多そうだしね。

「運転好きなんですか?」

「まぁまぁね。乗る機会は年々減ってきているけど、華子と出掛けるときは案外必須だったの」

「へえ?」

そう言いながら、葛西さんはコテージの鍵を開ける。

中に入るとまた扉があって、そこも開けると、おしゃれなテーブルセットと暖炉が見えた。
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