君を好きな理由
身体にかけられたタオルケットと毛布。
枕にしているのは葛西さんの膝。
起こせばいいのに。何を考えているんだこの人は。
起き上がって、ソファに寄りかかって眠っている彼を見た。
まつげは長い。
お髭は薄いのかな。
熊みたいな葛西さんは想像もつかないけれど、眠っていてなお端正な顔。
絶対男の人の肌じゃないくらい、キメ細やかな……綺麗系な顔よね。
だけど、しっかり男の顔。
眼鏡がないから、よく見える。
「風邪をひくわよ」
声をかけたら、ゆっくりと睫毛が動く。
初めはぼんやりと、それからパッチリ目が開いて、視線が交わった。
「それはこちらの台詞でした……」
起き抜けの少しざらついた声を聞いて、思わずニッコリする。
「毛布ありがとう。寝ちゃったのね」
「寒そうに丸まってましたから」
「付き合わなくてもよかったのに」
じろりと睨まれて肩を竦めた。
寝起きは機嫌が悪い部類らしい。
「部屋まで運ぶことを考えましたが、眠っている女性を勝手に運ぶのはどうかと思いまして」
……かと言って、女性をソファーに寝せたまま、自分はベッドで横になれないとでも思った?
まったく紳士的。
「珈琲をいれましょう。飲まないと、頭がついてこない」
葛西さんが立ち上がりながら溜め息をつくから瞬きを返す。
「あら。それって少し可愛いわ」
「可愛がられても困ります」
いやだって、憮然としている様子が、何だか叱られて拗ねた子供みたいで可愛いんだもんね。
クスクス笑っている私を置いて、葛西さんはキッチンに向かった。
「葛西さんも、朝は珈琲ないと頭が覚醒しない人~?」
「珈琲飲んで、少し……ですかね。朝飯作ってる間に冴えてきます」
「普段の朝も作るんだ」
「ええ。だから昼飯は手抜きでコンビニ弁当ですね」
「私は全部手抜きねぇ」
言いながら、毛布を畳んでソファーの隅に置く。
「洗面所使ってもいい?」
「どうぞ」
化粧も落とさず寝ちゃったから、お肌が大変。
まったくもう、若くないのに。
「ああ、洗面所にフェイスタオルくらいはありますから」
「んー。ありがとう。シャワー浴びてきてもいい?」
葛西さんはキッチンから顔をだし、二階に上がりかけている私を見つけて首を傾げる。
「湯船張りましょうか? 時間かかりませんよ」
「え。朝からお風呂なんて贅沢」
「たまにはいいでしょう。せっかくの休みなんですから」
言いながら、葛西さんはお風呂場の方へと歩いていった。
「……ありがと」
呟いて、荷物を置いた部屋に向かう。
この分だと、キッチリ3食作られて、キッチリ食べさせられそう。
何だか、甘やかされてる気分だな。
甘やかされるのは嫌いじゃないけど、ここまでされると申し訳ない気分にもなるかも。
バックの中に見つけたミントキャンディーを口に入れ、噛み砕きながら、着替えとお風呂セットにお化粧セットを持って階段を下りていく。
珈琲のいい匂いがした。
「大好きな香りだわ」
呟くと、ソファーの肘掛けに腰をかけていた葛西さんが顔を上げた。
「朝食はパンにしますか?」
「食べれるかな」
「二日酔いですか?」
「二日酔いなら安静にしてます」
「……ですよね」
ポツンと言われて、まじまじと葛西さんを覗き込む。
「まだ目が覚めて無いわね?」
「まぁ……」
言いかけた唇にキスをしてみたら、キョトンと、丸くなった目と視線がぶつかった。
「少しは起きた?」
「ええ……はい」
葛西さんは呟いてから、大きく溜め息をつき、
「……あの」
「なぁに?」
「……全く足りません」
空いていた片手でうなじを捕まれ、引き寄せられて唇が重なる。
最初は探るように、それからするりと舌が入り込んできて、口内を蹂躙していく。
柔らかくてざらついた舌が、私の舌を絡めとって、少し苦い珈琲の薫りと味がした。
……やばい。
この人、キスが上手い。
どうしようか? このままだと色んなモノに火が点いてしまいそう。
でも、こんな朝っぱらから?
リビングで?
考えていたら、パッと葛西さんが離れた。
お互いに荒くなった息を整えつつ、お互いにお互いを見つめ合う。
「……朝は、理性が保ちにくいです」
「う、うん。そうみたいね」
「ですから……」
「は、はい」
「さっさと風呂に行ってください」
ぷいっと、離れていく葛西さん。
スタスタとテラスの方に向かうと、サッシを開けて、マグカップ片手に出ていった。
「………………」
お前は初チューかました、男子中学生か!
枕にしているのは葛西さんの膝。
起こせばいいのに。何を考えているんだこの人は。
起き上がって、ソファに寄りかかって眠っている彼を見た。
まつげは長い。
お髭は薄いのかな。
熊みたいな葛西さんは想像もつかないけれど、眠っていてなお端正な顔。
絶対男の人の肌じゃないくらい、キメ細やかな……綺麗系な顔よね。
だけど、しっかり男の顔。
眼鏡がないから、よく見える。
「風邪をひくわよ」
声をかけたら、ゆっくりと睫毛が動く。
初めはぼんやりと、それからパッチリ目が開いて、視線が交わった。
「それはこちらの台詞でした……」
起き抜けの少しざらついた声を聞いて、思わずニッコリする。
「毛布ありがとう。寝ちゃったのね」
「寒そうに丸まってましたから」
「付き合わなくてもよかったのに」
じろりと睨まれて肩を竦めた。
寝起きは機嫌が悪い部類らしい。
「部屋まで運ぶことを考えましたが、眠っている女性を勝手に運ぶのはどうかと思いまして」
……かと言って、女性をソファーに寝せたまま、自分はベッドで横になれないとでも思った?
まったく紳士的。
「珈琲をいれましょう。飲まないと、頭がついてこない」
葛西さんが立ち上がりながら溜め息をつくから瞬きを返す。
「あら。それって少し可愛いわ」
「可愛がられても困ります」
いやだって、憮然としている様子が、何だか叱られて拗ねた子供みたいで可愛いんだもんね。
クスクス笑っている私を置いて、葛西さんはキッチンに向かった。
「葛西さんも、朝は珈琲ないと頭が覚醒しない人~?」
「珈琲飲んで、少し……ですかね。朝飯作ってる間に冴えてきます」
「普段の朝も作るんだ」
「ええ。だから昼飯は手抜きでコンビニ弁当ですね」
「私は全部手抜きねぇ」
言いながら、毛布を畳んでソファーの隅に置く。
「洗面所使ってもいい?」
「どうぞ」
化粧も落とさず寝ちゃったから、お肌が大変。
まったくもう、若くないのに。
「ああ、洗面所にフェイスタオルくらいはありますから」
「んー。ありがとう。シャワー浴びてきてもいい?」
葛西さんはキッチンから顔をだし、二階に上がりかけている私を見つけて首を傾げる。
「湯船張りましょうか? 時間かかりませんよ」
「え。朝からお風呂なんて贅沢」
「たまにはいいでしょう。せっかくの休みなんですから」
言いながら、葛西さんはお風呂場の方へと歩いていった。
「……ありがと」
呟いて、荷物を置いた部屋に向かう。
この分だと、キッチリ3食作られて、キッチリ食べさせられそう。
何だか、甘やかされてる気分だな。
甘やかされるのは嫌いじゃないけど、ここまでされると申し訳ない気分にもなるかも。
バックの中に見つけたミントキャンディーを口に入れ、噛み砕きながら、着替えとお風呂セットにお化粧セットを持って階段を下りていく。
珈琲のいい匂いがした。
「大好きな香りだわ」
呟くと、ソファーの肘掛けに腰をかけていた葛西さんが顔を上げた。
「朝食はパンにしますか?」
「食べれるかな」
「二日酔いですか?」
「二日酔いなら安静にしてます」
「……ですよね」
ポツンと言われて、まじまじと葛西さんを覗き込む。
「まだ目が覚めて無いわね?」
「まぁ……」
言いかけた唇にキスをしてみたら、キョトンと、丸くなった目と視線がぶつかった。
「少しは起きた?」
「ええ……はい」
葛西さんは呟いてから、大きく溜め息をつき、
「……あの」
「なぁに?」
「……全く足りません」
空いていた片手でうなじを捕まれ、引き寄せられて唇が重なる。
最初は探るように、それからするりと舌が入り込んできて、口内を蹂躙していく。
柔らかくてざらついた舌が、私の舌を絡めとって、少し苦い珈琲の薫りと味がした。
……やばい。
この人、キスが上手い。
どうしようか? このままだと色んなモノに火が点いてしまいそう。
でも、こんな朝っぱらから?
リビングで?
考えていたら、パッと葛西さんが離れた。
お互いに荒くなった息を整えつつ、お互いにお互いを見つめ合う。
「……朝は、理性が保ちにくいです」
「う、うん。そうみたいね」
「ですから……」
「は、はい」
「さっさと風呂に行ってください」
ぷいっと、離れていく葛西さん。
スタスタとテラスの方に向かうと、サッシを開けて、マグカップ片手に出ていった。
「………………」
お前は初チューかました、男子中学生か!