君を好きな理由
「あら。早いのね」
「彼女の様子見がてら、昼に入ると出てきましたから」
その彼女がいないのを見て、博哉は溜め息をつきつつ入ってくる。
「早退しましたか?」
「させました。貴方でも彼女の様子に気がつかなかったの?」
あんな分かりやすい顔色の人を、博哉が気づかないとも思えないんだけど。
「会議に行く前に、医務室に行くように申し伝えましたが……」
「うーん……」
主任の博哉に言われても来なかったか。
「その事で、観月さんに謝罪されました。彼女が医務室に行かなかったのは、自分達の妙な仲間意識のせいだったと」
……葛西ファンクラブか。
「こうなると、弊害がありまくりだわね」
「……これからは大丈夫じゃないでしょうか。秘書課が野戦病院の様だったと、興奮したおももちで言われましたよ」
「え。そこまで激しくなかったわよ」
博哉は診察椅子に座りながら、私の隣に座って微かに苦笑する。
「はるかのお陰で、少しづつ色々と変わっていくようです」
「良いことなのかしら。解らないけど……」
「変化は良いこともあり、悪いこともありですよ。俺としては、普通に会話が出来るようになりましたから、いい変化ですね」
「ふぅん……」
いい方に向かったなら良いんだけどね。
月日は人も変えるしね。
華子が良い方向に向かえたように、私も良い方向に向かえるかしら。
でも、少なからず前の男を引きずっている調子ならダメかな。
まだ、ダメなのか、いつまでもダメなのか……
優しい人ではあったのよ。
とても、優しい人。
優しくて……とても残酷な人。
「はるか?」
「はい?」
振り向いたら、口に何かを突っ込まれた。
「ふぐ……っ!?」
「林檎のコンポートです。昨日もんもんとしながら作りましたから、甘いでしょう?」
もんもんて……あんた……
「…………」
ニッコリ微笑んでいるけど、なんだか恐い笑顔だわ。
何だろう。何か不適と言うか……
「ちなみに今、全く俺の事、眼中に無かったでしょう」
口を押さえ、甘くて柔らかい林檎を咀嚼しながら視線をそらす。
まぁ……
「許せませんね。隣にいるのに」
「……本当に独占的なのね」
「言いましたよね? ちゃんと」
聞いたけども。
聞いたんだけどさぁ。
「……なら、付き合うの無理じゃないの? 私、最初に言ったよね。勉強したいって」
「相手が本や教材ならば、共有も許容範囲です。お互いに仕事もある身ですから、仕事に専念するのも仕方ありませんし、はるかの希望をはなから押し潰す事はしません」
「はぁ……」
「しかし今、誰か別の人の事を考えていたでしょう」
「…………」
「それは許せません」
……この笑顔で爽やかで、独占的な男をどう扱おうか。
「彼女の様子見がてら、昼に入ると出てきましたから」
その彼女がいないのを見て、博哉は溜め息をつきつつ入ってくる。
「早退しましたか?」
「させました。貴方でも彼女の様子に気がつかなかったの?」
あんな分かりやすい顔色の人を、博哉が気づかないとも思えないんだけど。
「会議に行く前に、医務室に行くように申し伝えましたが……」
「うーん……」
主任の博哉に言われても来なかったか。
「その事で、観月さんに謝罪されました。彼女が医務室に行かなかったのは、自分達の妙な仲間意識のせいだったと」
……葛西ファンクラブか。
「こうなると、弊害がありまくりだわね」
「……これからは大丈夫じゃないでしょうか。秘書課が野戦病院の様だったと、興奮したおももちで言われましたよ」
「え。そこまで激しくなかったわよ」
博哉は診察椅子に座りながら、私の隣に座って微かに苦笑する。
「はるかのお陰で、少しづつ色々と変わっていくようです」
「良いことなのかしら。解らないけど……」
「変化は良いこともあり、悪いこともありですよ。俺としては、普通に会話が出来るようになりましたから、いい変化ですね」
「ふぅん……」
いい方に向かったなら良いんだけどね。
月日は人も変えるしね。
華子が良い方向に向かえたように、私も良い方向に向かえるかしら。
でも、少なからず前の男を引きずっている調子ならダメかな。
まだ、ダメなのか、いつまでもダメなのか……
優しい人ではあったのよ。
とても、優しい人。
優しくて……とても残酷な人。
「はるか?」
「はい?」
振り向いたら、口に何かを突っ込まれた。
「ふぐ……っ!?」
「林檎のコンポートです。昨日もんもんとしながら作りましたから、甘いでしょう?」
もんもんて……あんた……
「…………」
ニッコリ微笑んでいるけど、なんだか恐い笑顔だわ。
何だろう。何か不適と言うか……
「ちなみに今、全く俺の事、眼中に無かったでしょう」
口を押さえ、甘くて柔らかい林檎を咀嚼しながら視線をそらす。
まぁ……
「許せませんね。隣にいるのに」
「……本当に独占的なのね」
「言いましたよね? ちゃんと」
聞いたけども。
聞いたんだけどさぁ。
「……なら、付き合うの無理じゃないの? 私、最初に言ったよね。勉強したいって」
「相手が本や教材ならば、共有も許容範囲です。お互いに仕事もある身ですから、仕事に専念するのも仕方ありませんし、はるかの希望をはなから押し潰す事はしません」
「はぁ……」
「しかし今、誰か別の人の事を考えていたでしょう」
「…………」
「それは許せません」
……この笑顔で爽やかで、独占的な男をどう扱おうか。