君を好きな理由
「とにかく、貴方たちはきっと、揃いも揃って独占欲が丸出しよね」
ポソリと呟くと、華子は曖昧に首を傾げ、磯村さんは眉を上げ、博哉は目を丸くして……それから眼鏡を押し上げた。
「……重いでしょうか?」
「重くはないわね。たまに困るけど、困ったら言っているし」
さては、歴代彼女は“重い”とか言われて別れてきたのかな。
博哉の今までの女性遍歴に、正直興味がないのが決定的な気もするけど……
あれよね。博哉って一点集中型なんだと思う。
あれもこれも独占したい……と言う人種には見えないかな。
だから、他に興味が動いたらすぐに解りそうだし、解るようなら曖昧にはならないかな。
何だか、幸福者かも……私って。
「そうですか」
どことなく嬉しそうにしている博哉を眺めながら、それからお弁当のおにぎりを掴む。
だからね。
私も、前の男にわだかまり残している場合でもないんだよね。
アイツはアイツなんだし、博哉は博哉なんだし。
見た目も性格も違うし、同じ要素はひとつだけよね。
どちらも生粋のお坊っちゃんってだけ。
この人が普通の人と同じなら良かったのに。
普通の人なら、私も普通に好きになれたかも知れないのに。
どうして良い家の息子なんだろう。
生まれを変えられないのは解っている。
その人が良ければいいとか……
自分達だけの事を考えていればいいだとか。
もうすでに、そんな風には考えられない。
そんな無責任に人を好きになれない。
なれないけど……
お昼ご飯を食べ終わって、誰も居なくなって、頭を切り替える。
今はくどくど考えていても仕方がない。
とりあえず、回れるだけ社内の各部署に顔を出す。
そうしていると、雰囲気の違いに気がついた。
今まで、葛西さんファンクラブからは、ひと睨みされてから無視されていたけど、それが無くなった。
午前中は……秘書課でも少しピリピリされたよね。
観月さんがこだわりなく話しかけて来たくらいで。
ふーん。
確かにいい方向に行ったのかな。
と言うか、それが普通と言うか。
皆、お坊っちゃんにどんな幻想持っているんだろう。
確かに、高スペックの見た目と魅力的な地位だわね。
だけど、性格が残念と言うか、ワケわからないと言うか、大丈夫かと心配になるし、エロいし……
そんな事を考えながら、各部署を恙無く見回りして、違う意味で営業部には嫌な顔をされたけど、今月残業が多いのは新人教育チームくらい。
どこも新人抱えると大変よね。
華子も愚痴は言わないけど、きっとあの子の事だから、後輩を全面に押し出して教育している事だろう。
企画室にも顔を出したら、山本さんが気がついてにこやかに手を振ってくれた。
その隣の彼が書類から顔を上げ、ギョッとしたのには苦笑した。
あれは間違いなく、華子の元カレの綾瀬君だ。
あの子は知らないけれど、卒業式の帰り道、彼の頬を殴った記憶が思考を過る。
まぁ、昔の話。
ポソリと呟くと、華子は曖昧に首を傾げ、磯村さんは眉を上げ、博哉は目を丸くして……それから眼鏡を押し上げた。
「……重いでしょうか?」
「重くはないわね。たまに困るけど、困ったら言っているし」
さては、歴代彼女は“重い”とか言われて別れてきたのかな。
博哉の今までの女性遍歴に、正直興味がないのが決定的な気もするけど……
あれよね。博哉って一点集中型なんだと思う。
あれもこれも独占したい……と言う人種には見えないかな。
だから、他に興味が動いたらすぐに解りそうだし、解るようなら曖昧にはならないかな。
何だか、幸福者かも……私って。
「そうですか」
どことなく嬉しそうにしている博哉を眺めながら、それからお弁当のおにぎりを掴む。
だからね。
私も、前の男にわだかまり残している場合でもないんだよね。
アイツはアイツなんだし、博哉は博哉なんだし。
見た目も性格も違うし、同じ要素はひとつだけよね。
どちらも生粋のお坊っちゃんってだけ。
この人が普通の人と同じなら良かったのに。
普通の人なら、私も普通に好きになれたかも知れないのに。
どうして良い家の息子なんだろう。
生まれを変えられないのは解っている。
その人が良ければいいとか……
自分達だけの事を考えていればいいだとか。
もうすでに、そんな風には考えられない。
そんな無責任に人を好きになれない。
なれないけど……
お昼ご飯を食べ終わって、誰も居なくなって、頭を切り替える。
今はくどくど考えていても仕方がない。
とりあえず、回れるだけ社内の各部署に顔を出す。
そうしていると、雰囲気の違いに気がついた。
今まで、葛西さんファンクラブからは、ひと睨みされてから無視されていたけど、それが無くなった。
午前中は……秘書課でも少しピリピリされたよね。
観月さんがこだわりなく話しかけて来たくらいで。
ふーん。
確かにいい方向に行ったのかな。
と言うか、それが普通と言うか。
皆、お坊っちゃんにどんな幻想持っているんだろう。
確かに、高スペックの見た目と魅力的な地位だわね。
だけど、性格が残念と言うか、ワケわからないと言うか、大丈夫かと心配になるし、エロいし……
そんな事を考えながら、各部署を恙無く見回りして、違う意味で営業部には嫌な顔をされたけど、今月残業が多いのは新人教育チームくらい。
どこも新人抱えると大変よね。
華子も愚痴は言わないけど、きっとあの子の事だから、後輩を全面に押し出して教育している事だろう。
企画室にも顔を出したら、山本さんが気がついてにこやかに手を振ってくれた。
その隣の彼が書類から顔を上げ、ギョッとしたのには苦笑した。
あれは間違いなく、華子の元カレの綾瀬君だ。
あの子は知らないけれど、卒業式の帰り道、彼の頬を殴った記憶が思考を過る。
まぁ、昔の話。