君を好きな理由
それは間違いないかもな。

やっぱりボンボンの考えは解らないとか、勝手にレッテルを貼ったりするんだろう。

でもさ、

「私、博哉は嫌いじゃないよ?」

「それは存じてます。嫌いなら、そもそも付き合ってくれるはずがない」

「あ……そう」

まぁ、うん。

間違いないけどね。

「ですが、きっと“好きかも”程度ですよね。解っています。でも俺は結婚を考えてます」

え。

ここで二度目のプロポーズですか、お兄さん。

こんな感じで?


「だいたい宣隆氏と比べられるのは心外ですし、あんな小さな男と同列に並べられるのも腹が立ちます」

「え。うん……」

しまいには小さな男と断言?


「確かに、大きい男かと言われれば俺はまだまだですし、嫉妬深いですから心は小さいでしょうし、何を考えているか解らないともよく言われますが」


ええと……


なんて言うか、やけに饒舌じゃない?


「愛しているから愛せとは言いませんが、せめて一人の男として……」

「あー……解った」

ポツリと呟くと、博哉は瞬きして首を傾げる。

「解りましたか?」

「うん。博哉が酔っ払っているのが解った」

「………まぁ」

ゆっくりと外されていく視線に、自覚があることも解った。


「とりあえず、聞いたわ」

「はい……」

「ちゃんと、普通の男として見る」

「はい……」

「素面でその台詞言えたら、ちゃんと聞いてあげる」


博哉は愕然として、それから立ち上がった。


「恥ずかしいです!」

はぁ!?

「あんたの恥ずかしいの基準が解らないわよ!」

「さすがに素面で愛してるは言えませんよ」

「………………」


どうすればいいかな。


この可愛らしい生物。


とりあえず……って、私たちにはとりあえずが多いけど。


「こっち座りなさいよ」

「……誘われてますか?」

真面目な顔をして振り向かれても困るけど。

「博哉は女から誘って欲しいわけ?」

「いえ。どちらかと言うと襲う方です」

「…………」

いや、だから、そんな事を真面目に言われても困るんだってば。

それでも隣に座り、置かれたままのビールコップを持たされた。


「でもね。博哉」

話始めると、彼は無言で首を傾げる。

「今日、吉田さんたちと話していて気がついた事もあるのよ?」
< 92 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop