君を好きな理由
博哉はあくまで博哉で、真面目なのか不真面目なのか……
いや。真面目に不真面目な事をすると言うか。
未だに読めない性格してる。
気を抜くとビックリするくらい、いろいろと戯れてくるけれど、ふとした瞬間には男の顔になるから大変。
それでも見た目のクールさと違い、付き合いがいいのは認める。
「これも似合いそうです」
だからって、服選びまでついてくるとは思わなかったけど。
さすがにデパートの吊るしはどうかと思って、それとなく選べそうな店に入ると、何故かノコノコついてきた。
喫茶店で待っていれば?と言っても通じない。
それでも博哉の指先に視線を送って、目を細める。
「赤はド派手過ぎるわよー。私は大人しい顔をしてないんだから、そんなの着たら悪目立ちするでしょうが」
「では、大人しくこちらは?」
「白は花嫁の色! それくらいは知っているでしょう」
「でも、黒はいかがでしょうか?」
私が持っていたのは黒のドレスワンピース。
色は確かに黒だけど、これはこれで見せ方次第だと思う。
「着てみましょうか?」
ヒラヒラさせると博哉は眉を上げて、無言で近くの椅子に座った。
見守る体勢?
店員さんに断りを入れて試着室に入ると、鏡を見て眉を上げる。
……笑ってるわね。
いや、なんだろうな。
楽しいのかな、私は。
楽しんでいるなら当然なんだけどさ。
「……まぁ、つまんないわけじゃないわよね」
ドレスワンピースに着替えながら頷いて、それから鏡に映る姿を見る。
ミモレ丈のフレアースカート部分は、薄手の柔らかいシフォン生地が幾重にも重なっていて、動くとふわりと風をはらんで揺れる。
フレンチスリーブで、デコルテが見えすぎな気もするけれど、これはどうにでもなる。
ウエスト部分には太めのサッシュベルト。
うん。
サッシュベルトの結び方次第で、派手にも上品にもなりそう。
しかもスッキリ見せてくれる背中のシルエットもなかなかだわ。
試着室のカーテンを開けると、
「これにパールつけて、ボレロかストールじゃない?」
博哉は真面目な顔をして、まるで観賞するみたいに私の全身に視線を走らせてから頷いた。
「よくお似合いです」
いや。そんなに真面目に言われても、なんだか困る。
「あ、ありがとう」
「その姿ですと髪はアップにした方が合いますかね。個人としては下ろした方が好きですが」
「夜会巻きじゃカッチリし過ぎよね。美容室予約かな」
どんな髪型にするかは、美容師さんに相談してみよう。
考えていたら、博哉がポツリと呟いた。
「貴女は薔薇なのだそうですよ」
「薔薇?」
「黒真珠と言う薔薇だと、山本の奥さんが言っていたらしいです」
「そんなに刺々しいかしら?」
「薔薇の棘は身を守るための手段ですよ。美しい花は手折られる。綺麗だけれど棘がありそうだと思われたようですね」
「……うーん」
まぁ、当たらずも遠からず、かな。
確かに柔らかくないものね。
「例えとしては、美しい人の代名詞ですが……」
「…………」
ニッコリ微笑んでいるけれど、すっかり顔つきは男の顔になっている。
何て言うか、博哉が男の顔をすると、色気が増すと言うか……
この顔も嫌いじゃない。
嫌いじゃないけどさ。
いや。真面目に不真面目な事をすると言うか。
未だに読めない性格してる。
気を抜くとビックリするくらい、いろいろと戯れてくるけれど、ふとした瞬間には男の顔になるから大変。
それでも見た目のクールさと違い、付き合いがいいのは認める。
「これも似合いそうです」
だからって、服選びまでついてくるとは思わなかったけど。
さすがにデパートの吊るしはどうかと思って、それとなく選べそうな店に入ると、何故かノコノコついてきた。
喫茶店で待っていれば?と言っても通じない。
それでも博哉の指先に視線を送って、目を細める。
「赤はド派手過ぎるわよー。私は大人しい顔をしてないんだから、そんなの着たら悪目立ちするでしょうが」
「では、大人しくこちらは?」
「白は花嫁の色! それくらいは知っているでしょう」
「でも、黒はいかがでしょうか?」
私が持っていたのは黒のドレスワンピース。
色は確かに黒だけど、これはこれで見せ方次第だと思う。
「着てみましょうか?」
ヒラヒラさせると博哉は眉を上げて、無言で近くの椅子に座った。
見守る体勢?
店員さんに断りを入れて試着室に入ると、鏡を見て眉を上げる。
……笑ってるわね。
いや、なんだろうな。
楽しいのかな、私は。
楽しんでいるなら当然なんだけどさ。
「……まぁ、つまんないわけじゃないわよね」
ドレスワンピースに着替えながら頷いて、それから鏡に映る姿を見る。
ミモレ丈のフレアースカート部分は、薄手の柔らかいシフォン生地が幾重にも重なっていて、動くとふわりと風をはらんで揺れる。
フレンチスリーブで、デコルテが見えすぎな気もするけれど、これはどうにでもなる。
ウエスト部分には太めのサッシュベルト。
うん。
サッシュベルトの結び方次第で、派手にも上品にもなりそう。
しかもスッキリ見せてくれる背中のシルエットもなかなかだわ。
試着室のカーテンを開けると、
「これにパールつけて、ボレロかストールじゃない?」
博哉は真面目な顔をして、まるで観賞するみたいに私の全身に視線を走らせてから頷いた。
「よくお似合いです」
いや。そんなに真面目に言われても、なんだか困る。
「あ、ありがとう」
「その姿ですと髪はアップにした方が合いますかね。個人としては下ろした方が好きですが」
「夜会巻きじゃカッチリし過ぎよね。美容室予約かな」
どんな髪型にするかは、美容師さんに相談してみよう。
考えていたら、博哉がポツリと呟いた。
「貴女は薔薇なのだそうですよ」
「薔薇?」
「黒真珠と言う薔薇だと、山本の奥さんが言っていたらしいです」
「そんなに刺々しいかしら?」
「薔薇の棘は身を守るための手段ですよ。美しい花は手折られる。綺麗だけれど棘がありそうだと思われたようですね」
「……うーん」
まぁ、当たらずも遠からず、かな。
確かに柔らかくないものね。
「例えとしては、美しい人の代名詞ですが……」
「…………」
ニッコリ微笑んでいるけれど、すっかり顔つきは男の顔になっている。
何て言うか、博哉が男の顔をすると、色気が増すと言うか……
この顔も嫌いじゃない。
嫌いじゃないけどさ。