〔恋愛小説ミリしらが書く〕 司書と王子様
たらり、と額を冷や汗がつたう。


このまま逃げ出したい所だが、異常な空気感に足がすくんで動けない。


その時だった。



「はーい?俺だけどー?」

と、凍った空気をかち割るような、能天気な声が響く。

その声を堺に、先程までの戦慄した空気が少しずつ和らいでいった。


……栞を渡してすぐ帰ろう。

さっき何がおこったのか、私には見当もつかない。あるとしたら、いま私に近づいてくる……暁月…さん。


「えっと……あ、図書委員会の!」

雑用ばっかりだけど、それなりに知名度はあるらしい。週の3分の1の休み時間、カウンターについてるだけはある。と自画自賛して、さっさと用件を済ませる。


「……これ、忘れ物です。」


「あ、ありがと……。」

「では。」

こんなことがあって、愛嬌をふりまいていられるほど、私の精神は丈夫じゃない。


さっさと退場しよう。



「………!!」

「え?あ……ちょっ……!」


いきなり暁月さんが私の腕を掴んで教室から走り出した。


その時、1の3からは、再び声が消えた。

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