秘密と記憶が出会うとき
結局、その日に須藤が祥子の前にもどってくることはなかったが、理由は明央が帰ってきてすぐにわかった。


「ぇえええ!!生活管理部で座り込みですってぇーーー!」


「お、大きいって。声。」


「ご、ごめん・・・。
そんなことまでやっちゃうんだ。あの人。」


「おまえさ、須藤にすごく気に入られたんだな。」


「明央先輩は須藤先輩をよく知ってるんですか?」


「2年のとき同じクラスだったっていうだけだけど、あいつは偉そうで態度はでかいけど、自分でも努力するやつだし、輝いている他人を見ると、話しかけたくて仕方がないってやつなんだ。

なんていうか・・・憧れって感じなんだろうな。
とても素直なんだよ。
きっと、おまえがきれいだったから話したくて仕方がなかったんだろうな。」


「でも・・・私・・・そんな・・・困る。」


「そうだな。女だとわかったら・・・俺も困る。」


「えっ!」


「いや、かくまったのがバレたら俺、退学になるかもしれないし。
いくらおまえが学長のコネのあるやつだとしてもなぁ。」


「でも寮だって敷地の端っこどうしで離れているし、ふだんの生活だと会うことありませんよ。」


「そうだな。なぁ・・・ジャージーのままでいいから、その、今日の舞ってやつを見せてくれないか。」


「いいですよ。音楽はさすがに鳴らせませんけど、それでいいなら。」


「うん。」


祥子が先生に絶賛された舞を披露すると、明央は口をぽか~んとあけたまま両手を前であわせていた。


「こんな感じなんですけど。あ、明央先輩?」


「あ、ああ、ごめん。見とれてた。
すごくきれいだ。
着物をきて舞う祥子はもっときれいなんだろうな。

文化祭、絶対・・・応援にいくからな。
それに、北天寮のやつら集めて、守らないといけないな。」


「守る?」


「そうだ。南地のやつらや自宅生の連中だって、おまえに接触してくるのは目に見えてるからな。
ここは男子校だぞ。」


「でも当日は女性のご家族もいっぱい来るじゃないですか。
きれいな女の子もいっぱいきますよ。
女の子にとってはここはイケメンで賢い彼氏狙いなところでしょ?」


「そうだけど、おまえは・・・そんな女たちよりもずっときれいだ。」


「先輩、もう・・・そんな・・・はずかしいじゃないですか。やだなぁ。」


「本当だ。俺はもう・・・自分をおさえられない。
こんな美人の私生活に同居させられてるんだからな。

もう、キスしたくてたまらない・・・。
何言ってるんだ。俺は。
ごめん、出てくるわ。」


「待って!明央先輩・・・ごめんなさい。
いつも私のせいで、部屋にいられなくして。
キスしてください。」


「なっ・・・だ、だめだ。キスしたらそこで止められるかどうかわからん。
祥子がかわいくて・・・はっ・・・おぃ、目をつむるなよ!」

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