秘密と記憶が出会うとき
翌朝、祥子が目を覚ますと、明央の鞄だの、学校の用意がすべてなくなっていた。
『ごめん。君は居るべきところへ帰るんだ。
短かったけど、楽しかったよ。
離れても友達だからな。
いつか、学校以外のところで女の子の君と出会いたいな。』
そんなメモが残されていた。
「明央先輩・・・どこへ行ってたんですか?」
祥子が落ち込みながら、学校へ行く準備をしていると、2人の男性がやってきて・・・
「学校の始業時間がせまっていますが、学長命令であなたを迎えにきました。
とりあえず、今日は学校は欠席して学長のところへ行きましょう。」
「えっ・・・どうして雪貴さんの?」
祥子が雪貴のところへ行ってみると、雪貴から書類を手渡された。
「これは?」
「ここからいちばん近いところにある女子高のパンフレットと願書さ。
たぶん、レベル的にも君が通っていた学校と似通ってると思うし、今だったら楽勝かもしれないね。」
「どうして女子高の用意が?
私は雪貴さんの学校へ転入したのに。」
「だからそれは・・・兄貴がやったことで、俺は賛成しかねていた。
案の定、君は同室の男を誘惑して・・・。」
「ちょ、ちょっと待ってください!
私は誘惑なんてしてません。
明央先輩は真面目で紳士だから、私のことが女だとわかっても・・・何も・・・。」
「君は若い男のことなんてわかってない。
彼には限界だった。
だから、彼は夜更けにここにきたんだ。」
「えっ・・・明央先輩はここに・・・きたの?」
「ああ、もう限界だったようだ。
このまま生殺しの状態が続けば、自分がダメになるか、自分をいかせば、君を泣かせてしまうとほんとにつらそうだったよ。
彼は真面目でいい男だからね。」
「それで、私に女子高へ行けとおっしゃるんですね。」
「そうだ。行ってくれるね。」
「嫌です!私はまだ勉強もついていけてないんです。
みんなに女だと知られて、問題になりそうになったら自分で学校をやめます。
寮は出ます。
明央先輩を悲しませたくありませんから。
アパートでも下宿でも探してください。」
「その必要はないな。
ここで暮らせばいい。
ここから、学校に通うこと。」
「あ、あの・・・転校しなくてもいいんですか?」
「ああ。ただし、問題になりそうになったら即刻転校すること。
俺は男子校になど入れておきたくはないが・・・君が言い出したらきかない娘だということはよくわかってるから。」
「雪貴さんって、私に甘いんですか?
なんかいつもの感じと違うみたい。」
「ほんとに記憶がもどらないのが腹立つよ。
俺は君には甘くなってしまう。
だから君のなくした記憶の部分の説明すらできない。」
「もういいですよ。記憶のことは・・・説明もできないくらい苦しくて嫌なことなんでしょう。
実家からここに連れてこられたことも、雪貴さんたちがきちんと考えてくれたことくらいわかります。
感謝してますから。
理由はわからないけれど、守っていただいてるのはわかっていますから。」