秘密と記憶が出会うとき
祥子はクスクス笑って雪貴に駆け寄った。

「まさか、男子校に編入させられるとは思わなかったけど、いい体験できたわ。」


「はぁ・・・あれはなぁ。兄貴が緊急策に思いついたというか、俺が君に手を出せないようにしたというか・・・結局、寮の生徒たちにも申し訳ないことをした。

だから明日からは女子の高校に・・・」


「だめよ、私は踊らなきゃいけないもの。」


「男子校へまだ通うつもりなのか?
だめだ!それに着物姿はだめだ!」


「どうして?先生にもほめられたし、評判いいんだから。」


「だからだめなんだ!君を女だとわかっているやつは君に夢中だし、男だと思ってるやつらだって、着物姿になればあいつら・・・いやらしい目でみる。
絶対、女だと気が付く!もう限界だ!」



「雪貴さん?」


祥子の今見ている雪貴はまるで駄々っ子な少年が好きなお姉さんを取られてしまうような素振りに見えた。


「自分では気づいていないようだけど、おまえはけっこう目立つんだよ!
そ、その胸が・・・。
女だと気づかれないわけがない。

そんなことになったら、俺は学長として・・・その・・・責任が・・・いや、大人の男として・・・いや、人間としてだな・・・あ゛ーーーー!」


「どうしたの・・・雪貴さん?」


「く、くそっ、もう限界だ。」


雪貴は祥子を押し倒すと、首すじからはげしくキスをし始めた。


「きゃぁ、あっ・・・や、やめて、だめえ!」


「なんて発育してるんだ、くそっ、とめられない。」


祥子もそんな荒々しい雪貴の表情にあらがうことなどできなかった。

ずっと小さい頃から追いかけていた憧れのお兄さんが私をこんなに求めてくれるなんて・・・。


「祥子、俺は追いかけてくる君がかわいくて仕方がなかったんだ。
でも、あの事件以来・・・姿を見せられなくなった。

嫌いになったんじゃない。俺もあのときは若くてショックで、君になんていったらいいのか言葉がどうしてもみつからなくて。
けど、言葉なんていらなかったんだ。
君に触れるだけで、もう、俺は・・・。ん~~」


「あん、あぁ・・・はぁ。だ、だめ・・・そんな・・・」


雪貴の手は祥子の女である部分をすべて優しくなぞらえていた。
しかし、結ばれるまでは至らなかった。


「ご、ごめん。うっ・・・うう・・・早急すぎた。
兄と約束してるんだ。
君を正式に俺のものにするために、きちんと学ばせること。
だから、ここまでだ。」


「雪貴さん・・・そ、そんな。」


「すまない。大人じゃないよな・・・こんなやり方は。」


「いいの。正直にいってくれたもの。私・・・女子の学校へ移ります。」


「君が俺を嫌いにならない限り、俺は絶対この続きをする!約束だ。
今日のところはすぐ手続きさせるから。」
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