秘密と記憶が出会うとき
帰宅すると、雪貴は少し遅くなると連絡が入っていて、夕食は祥子ひとりで済ませた。

そして祥子はいつものように、部屋で宿題と予習をしていると、いつもより乱暴なドアの開け方をして雪貴が立っていた。


「お帰りなさい。」


「今日は、須藤とデートしてたのか?」


「デートなんてしていません。
新しいクラスの友人のまどかの家に誘われて、いったら、お兄さんが須藤先輩だったっていうだけで・・・帰りはひとりじゃ危ないからって送ってくださっただけです。」


「世間は狭いものなんだな。」


「ええ、他に用がなかったらもうすぐ私は寝ますから、出ていってください。」


「お、おぃ・・・どうして俺が追い出されなくてはならないんだ!」


「雪貴さんは私が男の人と接触すると文句がうるさいから、もう話したくありません。」


「ちょ、ちょっと待て俺は君の心配をしてるだけで追い出されるようなことはしていないはずだ!」


「須藤先輩を侮辱しました。
人の好意に対して失礼でしょ。
それに、私は信用されてないってよくわかりました。

もう、話すことなんてありません。出ていってください。」


「お、おい、待てって・・・。はぁ。
(仕方ないか。女子高生には男がべつのことを考えてるなんて想像もつかないよな。)」



そんなぎくしゃくした2人に、佐伯貴文から連絡が入った。


「桧谷夏生と陽子がビジネスがらみのパーティーを開くと志奈子さんから連絡がきた。
人脈を広げるなどと表向きはいいことを並べてはいるが、実際は資金面で助けてくれと泣き落とすつもりだろう。

とくに陽子が誘惑してきたり、過去を持ち返したりしてきたら雪貴はいろいろと絞り取られるぞ。
雪貴のボディガードに祥子ちゃんを任命したいんだけどな。」


「わ、私がどうして?
私はまだ学生だし、そんなお仕事上のパーティーなんてどうしたらいいのかわかりませんし。」


「そんなこといわないで、雪貴を助けてやってほしいんだよ。
でないと、陽子は雪貴に妊娠させられたと触れ回ることになる。」


「えっ、そんなことがあったんですか・・・やだ・・・。」


「お、おぃ・・・俺は彼女とはそういうことには・・・。」


「おまえが寝てる部屋で裸の陽子が座ってなければ、堂々としていられるんだがな。
カギをしっかりかけていなかったせいで、彼女の独断場となり、挙句の果てが妊娠騒動だったからな。」


「陽子お姉さん・・・雪貴さんの子を?」


「ち、違う!他の男の子どもを妊娠した。そのうえ中絶したんだ。」


「そして俺を・・・俺を悪者にしたんだ。
俺ははめられた。
俺は、疲れてその日は泥のようにベッドで寝てたんだ。
起きたら、何が起こったのかわからなかった。」
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