秘密と記憶が出会うとき
結局、話し合いの末、雪貴はときどき祥子に会いに貴文の邸にやってくることになった。

貴文と志奈子は近所の小さな教会で、結婚式をあげ、国内で旅行を楽しんだ。


その間は貴文の邸に水野他、ボディガードの待機組が祥子を守っていた。


「水野さんからの指令で、夜は雪貴さんから祥子ちゃんを守れって言われてるんだけど・・・いいのかい?」


「いいんじゃない?いくらなんでも雪貴さんがそんなストーカーみたいなことするわけないでしょ。
ここは電話で行きますからっていえばいつでも、遊びにくるのはOKな家なんだし。

水野さんの話だとまるで雪貴さんが夜這いでもしてくるみたいなこというんだもん。
雪貴さんだっていくらなんでも・・・今年いくつだっけ?」


「27歳だったかなぁ・・・私と同じだな。」


「三枝さんにお兄さんがいたなんてびっくりだったけど・・・いつもは何してたの?」


「いつもは、貴文さんの秘書だね。今夜は特別任務。
環じゃ、送り狼になりそうだしね。」


祥子がざっくばらんにしゃべっているこの男は、三枝環の兄の三枝卓といい、いつもは貴文の秘書兼ボディガードとして働いていた。


「もしかして、卓さんって雪貴さんの・・・?」


「同級生をやってたこともある。
でも、頭のできがやっぱり違うしね、それに私はこれでも既婚者ですからね。
ついでにパパでもある。
なので、最近はボディガードは若い者に任せがちでね。」


「卓さんだってまだ年寄りじゃないのに。
そろそろ私、寝る準備するね。
お母さんの留守中よろしくお願いします。」


「はい、任せてください。」


祥子が寝室に入ったことを確認してから、三枝卓はいつもと違う空気にピリピリしていた。


「ははん・・・これは面白そうだね。
同級生で、夜を楽しめそうだ。」


三枝卓は防犯用のベルや大きな音が鳴る仕掛けはすべて電源を切ってまわった。

そして、すぐに部下たちに命令を伝える。

もちろん水野にも連絡をいれ、防御態勢を作る。



ガサッ・・・ガサガサ・・・ゴソッ


3人ほど男たちが玄関へと向かって突き進んでいくと、三枝の部下たちがそれを食い止めるかのように走りだした。


その間に、三枝は祥子の部屋のある2階の窓のそばについた。


ガタッ・・・


「よ~し、なんとかまいたようだな。」


「甘いよ、雪貴さん。ゲームセットです。」


「うっ、お、おまえ・・・三枝・・・どうしてここに。」


「やあ、ご無沙汰しております。
今夜は祥子お嬢様の護衛隊長をお引き受けしています。」


「まさかおまえがここにいるなんて・・・。」


「弟じゃなくて安心だろ?
これでもかなり気をきかせたって貴文社長が言ってたよ。
しかし・・・貴文社長の勘はすごいね。
夜這いに来るなんてね。
残念ながら、元同級生とサバイバルゲームで終わりそうだけどな。あははは。」


「くそぉ!!悔しい!!」
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