秘密と記憶が出会うとき
正直なところ、祥子は中澤明央が怖かった。
ここまで体格のいい、アスリートという感じの男の体を見るのは初めてだったからだ。


(女の子だってばれちゃったら、私どうなっちゃうんだろう?
あんな大きいんだもの、私は逃げる場所なんてきっとないわね。

いくら雪貴さんが学園長だっていっても、寮まで助けにきてくれることなんてないよね。
第一助けてくれる理由なんてないもの。

雪貴さんの話をそのまま信じると、彼に夢中になっていたのは私で・・・雪貴さんは私は小さな妹くらいにしか考えてないんだし・・・。)


まだ教科書と最低限の生活必需品だけを持って、祥子は明央と同じ部屋で生活し始めた。

翌日、学長室に呼ばれて祥子は報告をさせられたが、雪貴は「そうか。がんばれよ。」としか言わなかった。



不安に駆られながら、祥子は最初の土曜日を寮で迎えることになった。


「おばさん、なんか寮であるんですか?
寮の人たち・・・飾り付けみたいな、何かの準備みたいなことをしておられるみたいなんですけど。」


「何言ってんの?あんたの歓迎会にきまってるじゃないの。」


「歓迎会?」


「そうだよ。学期の途中で入ってきた子は歓迎会で迎えるのが、ここの伝統なの。
ほら、あんたと同室の中澤クンがはりきって、みんなに準備の指示をしてくれてるわ。」


「中澤先輩が?
(そういえば、早くから部屋を出て楽しみにしてろって・・・先輩言ってた・・・。)」



お昼ご飯を少し過ぎた頃・・・一斉にたくさんのクラッカーがはじけまくった。

パンパンパン!!


「2年A組に編入した桧川祥クンだ。
北天寮ルールにより、今日は歓迎のパーティーということだ。

学校では同じクラスメートでもライバルどうしという関係になってしまうが、この北天寮のヤツらはライバルとして先輩後輩として、正々堂々をモットーとしていることが伝統だ。

毎回、言ってることだが、同じ家庭に双子がいて、お互い同じ国立大学を志望していたとして、心情的にはライバル心むき出しであっても入学したらお互いは兄弟のままだろ。
その気持ちだよ。ここはそういう家庭のかわりのスペースでもあるんだ。
な~んて、学生代表の俺がいうのもカッコつけすぎだが、とにかく新しい家族を温かく迎えてくれよな。
じゃ、かんぱ~い!」


「わぁ、まるですごく偉い先生みたいだね。中澤先輩って・・・。」


「あれさ・・・学長のウケ売りだから。」


「はぁ?」


「双子がどうのこうの・・・っていう話とかはもともと学長が話したことなんだよ。
先輩はそれをそのまま言ってるだけだから。」


「あははは・・・そうなんだ。」
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