マサユメ~GoodNightBaby~
オレの通う学校は男女共学で普通科と商業科に別れている。

私立東亜学園付属高等学校だ。

普通科の成績優秀者は東亜学園の大学に推薦で入学することができるようになっている。

部活動も盛んで良太の所属するバスケ部は都大会の常連だし、サッカー部や吹奏楽部、柔道部や剣道部の都大会や全国大会への出場は珍しくない。

この高校を選んだ理由はよく覚えていない。

でも何故かこの高校に通う未来がはっきりと受験の時には見えていて、滑り止めも受けずに単願で入試を受けていた。

そして、その未来図の通りオレはこの高校に通うこととなったんだ。

「おはよー。良太、リアム君」

校門の付近で名前を呼ばれた。

呼んだのは同じクラスの橋本 真緒(はしもと まお)だった。

「おはよう、まお」

「……はよっす」

良太のテンションの低さに真緒は目を丸めた。

「どうしたの良太のやつ?」

良太に遠慮して小さな声で真緒はオレにそう尋ねた。

オレは横目にため息を何度も繰り返す良太を見て真緒に告げる。

「今朝の小テストで赤点だったら居残り補習なんだって」

「ああ。

…………それで、ね」

真緒は誰とでも仲良く、男子からの人気もある。

気配りもできるし、いざと言うときにはリーダーシップを発揮して、皆を引っ張ることもあるので先生達からの信頼もある。

そんな、真緒が励ましの言葉すら出ない。

それが良太の学力なのだ。

「スポーツ推薦とか羨ましく思ってたけど、こんな弊害あるんだな」

「はぐぅうっ」

良太は学力のことを遠回しに言われて心のダメージを負ったみたいだ。

「いや、私もスポーツ推薦だけど平均より上だから。良太の場合はスポーツ推薦で勉強怠ったとかじゃない分、ほんと不憫よね」

「つぉあっ」

つぉあっ?なんだその擬音。

同じくスポーツ推薦で入学した真緒に哀れまれてしまったことで更に傷口が広がったらしい。

ちなみに真緒は女子剣道部の期待の星であり、前回の都大会団体戦では一年生にして副将をつとめていた。

「まぁ、こればっかりは助けてあげられないし、がんばりなさいよ」

「そそ。がんばれ少年」

良太は口をへの字にして不貞腐れているようだった。

その後はオレと真緒で小テストに出てきそうな問題を予想し、良太はそれを聞いていた。

そんなこんなしているうちに、オレたちはチャイムが鳴る少し前に教室へと到着した。

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