マサユメ~GoodNightBaby~
教室の扉を開くと学級委員長が黒板を綺麗にしているところだった。

我らが学級委員長の名前は小西 春明(こにし はるあき)。

委員長は教室に入ってきたオレら3人を見て笑顔で言う。

「おっす、仲良し3人組」

委員長は学力も人望もあるが、よくある小説の委員長キャラの様に陰キャラでもなければ、コミュニケーションが苦手なわけでもない。

背は男子校生の平均身長くらいで、少し痩せ気味。

部活は確か将棋部って聞いたことがあるけど、生徒会役員もしている為にあまり部活には顔を出せていないと話しているのを聞いたことがある。

真面目は真面目。

そこに疑いの余地はないのだけれど、どちらかと言えば誰とでもフランクに話すし、先生とも友だちの様に話したりとちょっとやんちゃなくらいの高校生の印象を受ける不思議なヤツでもある。

「しっかしまあ毎日毎日綺麗にするなあ。どうせ授業で汚れるでしょ黒板なんてさ」

黒板消しの跡さえ許せないのが伝わるほど見事な黒板の清掃だ。

「へ?まあそうだけどさ。綺麗なほうが気持ちいいじゃん?」

何で?とでも言わんばかりの回答に思わず笑ってしまった。

「え?おかしいかな?なあリアム」

「いや、そんなことないよ。ただ委員長ってつくづくB型っぽくないなと思ってさ」

几帳面で綺麗好き、気遣いも出来る。典型的なA型の正確なのに実際はB型。

委員長はなんとなくギャプが多い。

「っと、そんなこと言ってる間にチャイムなるな。席に着こうぜ」

「だね」

「ああ」

「……うえーい」

良太のテンションの低さに気付いた委員長だったけど、特に触れることもなくオレ達はそれぞれの席についた。

『キーンコーンカーンコーン・・・キーンコーンカーンコーン』

朝のチャイムの音が学校に響き渡った。

今日は水曜日だ。

オレのコンプレックスでもある英語の授業も午後に控えているし、朝から数学の小テストがあるときたら良太じゃなくても気分は落ち込むな。

「暑・・・」

Yシャツの襟元をつかんでパタパタと空気を送り込む。

錯覚にすぎないように思うけど送り込まれた空気はひんやりとしていて、動かす腕はダルいのだけれど、その動作を続ける。

真緒は隣の席の佐々木さんと話をしている。

委員長は小テストの予習かな?もう数学の教科書を開いて何かしていた。

良太こそ委員長のようにしたら良いと思うのだけれど、気を紛らわしたいのか、諦めモードに突入したのか周りのグループの男子で盛り上がっていた。

「はーい、まだ席に着いてないやつ席につけー。おはよー」

扉が開いて担任の若林が入ってきた。

数人の席を立っていたやつらがゆっくりと席に戻るのを見届けて、若林が「よし、出席取るか」と小さく言って、朝の出欠を取り出すのだった。
< 14 / 63 >

この作品をシェア

pagetop