マサユメ~GoodNightBaby~
「新井」
「はい」
「秋元」
「うーい」
「井出」
「・・・はい」
「江藤 慎吾」
「はい」
出席は淡々としていて、なんだかぼーっとする。
その間はよく夢のことを思い出したりしている。
柔らかな雰囲気に満ちた空間。
「中野」
「おっす」
「南原」
「はーい」
「森田」
「はい!」
響き渡る透き通った歌声は、不安を浄化していくような気持ちにさえさせられる。
「薬師」
「・・・」
あれはいったい誰なんだろう。
心当たりはあるのだけれど、残念ながらその人との思い出が記憶がオレにはない。
「薬師 リアムー」
「・・・」
だからいつもここまで来て思考を止める。
あの夢の中で、次こそは彼女が誰なのかを聞いてみようと心に決めながら。
「薬師 リアムは休みか?返事がないぞー」
「リっくん。リっくん!ぼーとしてないで、返事しなきゃ」
隣から腕を小突かれてようやくオレは戻ってきたらしい。
「あ、はい!います、すいません」
慌てて返事をしたオレを見てクラスの皆が笑った。
若林は「しっかりしろよー」とだけ言って出席確認を続けるのだった。
「ありがとう湊、助かったよ」
危うく欠席扱いにされそうになったオレを救ってくれたのは隣の席の本田 湊(ほんだ みなと)だった。
内気なところはあるが、困っている人がいると助けなくてはいられないお人よしだ。
湊はそんな正確だけど声が小さかったり、人前に立つことが苦手だったりするから皆の弟的な存在でもある。
「てことで休みは瀬川で、本村はまた遅刻か?誰か何か聞いてるか?」
本村 勝(もとむら まさる)はこのクラスというか、学校の不良グループのリーダー的な存在で、授業をサボったりは当たり前だ。
校内で喫煙して停学になったこともあるし、他校の生徒と度々問題を起こしては話題になったりもしていた。
オレは平穏に生きたいから、別に関わるつもりもないけど、ああいうヤツって何を考えてるんだろうな。
「また勝くん休みかな・・・」
「え、湊って本村と仲いいの?」
意外な事実だ。
「んー?仲良いって言うか幼稚園からの付き合いだしね僕と勝くん」
「へー。なんか意外な組み合わせだな」
「そうかな?まあ、そう見えるか。
でも勝くん本当は優しくて友だち想いなんだよ?」
そう言って港は笑っていた。