マサユメ~GoodNightBaby~
その時、視界を砂嵐が襲った。
深いな耳鳴りがして、反射的に瞬きをした時に湊の笑顔が残像として残ったような気がした。
「え・・・なんだよこれ」
そして目を明けた瞬間に見えたのは、湊がどこかの一室でバラバラに身体を引きちぎられて殺されている風景だった。
「うわぁぁぁぁぁあ!!!」
口を手で覆い、のけぞるようにした瞬間に視界が晴れた。
「リっくん?どうしたの?」
「え、あれ?湊?」
目の前にいたのは首も手足もしっかりと繋がって、オレの顔を心配そうに覗き込む湊の普段通りの姿だった。
周りを見てもさっきの知らない部屋ではない。
当たり前だけど今さっき出席確認の為に返事をした教室だ。
「リっくん急にこっち見ながらぼーっとしだしたからビックリしたよ。疲れてるの?」
オレは目に焼きついた凄惨な映像を否定する為に、慎重に慎重に周りを見渡し、湊の首元や手足の付け根を見た。
いつもの教室だ。
湊の首はついてる。
手も足も勿論ついてる。
血だまりなんてどこにもないし、港は死んでもいない。
「良かった」
オレは思わずそうこぼしていた。
湊は目を丸くしていた。
そうだよ。疲れているんだろう。
あんな幻覚を見るなんて、この暑さのせいでどうかしてたんだよ。
じゃなきゃ、あんなこと起こるわけがない。
「ん?」
窓の外を見た湊が何かを見つけたかのようにそう呟いた。
「どうした?犬でも迷い込んできた?」
湊はそこに何かを見つけた場所をまた見つめるが、何もなかったようだ。
「んーん、なんでもない」
そう言って笑った。
「あんな場所に外国の人が立ってる訳ないよね・・・」
湊が呟いた言葉をオレは聞いていなかった。