マサユメ~GoodNightBaby~
湊とは帰る方向が同じで色んな話をした。

その中で湊がいつも弁当を持ってこない理由も判明した。

「うち再婚してるんだ。で、新しい母親とはあんまり打ち解けてなくてね」

そう悲しそうに笑っていた。

湊はいつでも笑っている気がする。

「湊は好きなやついないの?」

「へ?」

何気なく聞いてみただけなんだけど、顔を真っ赤にしてる。

うん、これはいるな。

「へー、いるんだ」

「いる。いるけど、無理だから」

湊はそう言って下を向いた。

そのせいで傘が傾いて、背中に傘を伝った雨粒が当たった。

「冷たっ!」

「えっ?あっごめん!」

そう言って思いっきり傘の傾きを直そうとしたもんだから、今度は反対側に傘が傾いて背中に当たった粒と比較にならない量の雨粒が二人の顔面に落ちてきた。

「…………っぷ」

「ぷっ。おまえ、マジで勘弁しろよ」

「はははっ。びっしょびしょ。

もえこれ傘要らなくない?」

二人してびしょ濡れになって声を出して笑った。

雨の勢いは強すぎて足はぐっしょり。

湊のせいで頭も背中もびしょ濡れ。

「僕ね、真緒ちゃん好きだよ。

だから、リっくんには負けないからね」

唐突に湊はそういった。

え?負けないからって。

「負けないからって何だよ?」

「へへ。リっくんの鈍感。

じゃあ僕ここ左だから。傘はリっくん使ってね!また明日」

そう笑顔で言って湊は駆けていった。

一人になったせいかな?傘で跳ねる雨粒の音が大きくなった。

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