マサユメ~GoodNightBaby~
ここ、どこだ?
見覚えのない部屋だ。
誰か寝てる?
ベッドに横たわる人の寝息が、窓を打つ雨粒の音でかきけされている。
本棚は綺麗に整頓されている。
メジャーな漫画のなかに剣道を題材にした女の子が主人公の少女漫画が紛れていた。
身体が不自然に動いている。
段々とベッドに近づいているのに、歩いているわけではないみたいだ。
ゆっくりと視線は地面と平行を保ったまま近づく気味の悪い感覚だ。
短い髪。
男だよな?
段々と近づいていき、布団の隙間から顔がようやく見えてきた。
「…………湊?」
ベッドには湊が眠っている。
何でオレ、湊の部屋にいるんだ?
一回も遊びにいったこともないのに。
「え?」
視界の両端から手が現れた。
なんだこれ、オレの手だけどオレの意思とは関係なく動いてる。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
2つの手がゆっくりと、ゆっくりと寝息をたてる湊の首もとに近づいている。
広げた手が首を包み込んだ。
「何しようとしてんだよ。やめろよ、おい!」
首もとにかけられた手に力が入り始めたのが見えた。
間接が曲がり、指が少しずつ湊の首に柔らかくめりこんでいく。
やめろ!
やめろ!
湊の首がしまる。
「…………あっ。あ」
呼吸が出来ずに無理矢理に目覚めた湊は目を見開いていた。
それでもオレの手はどんどん力を入れて湊の首をしめていく。
「……やめ…………たすけ」
力一杯にめり込んだ手。
湊は口を開け、紫色の顔で小さく呟くように助けを求めている。
指先の力は人間の力とは思えないもので、湊の呼吸を止めるだけでなく、ついに皮膚を破りはじめた。
鮮血が湊の細い首から溢れ出す。
「…………あ…
は、あ」
水色のシーツに赤い染みが広がっていく。
ボキッ。
首の骨が折れる音。
もう湊の声は聞こえない。
それでもオレの手は死を慈しむように。
死体を愛でるようにゆっくりとゆっくりと、更に力を入れていく。
裂けた皮膚がビリビリと破れていき、筋肉を絶っていく。
そして、両の手が完全に握り込まれた瞬間だった。
「goodnight baby」
湊の恐怖に満ちた顔が宙に舞った。
引き裂かれた首から大量の鮮血が、栓の抜けたホースの様に飛び散っていく。
それから、手をちぎった。
まずは右手を肩から引き裂き、関節でバラバラに破いた。
ベッドのシーツは真っ赤に染まり、ベッドの足を伝ってフローリングにまで鮮血が溜まってきた。
左手も同じように壊した。
足も引き裂き、破き、投げ捨てる。
雨の音の中で、皮膚が破れ、肉の千切れる音が響く。
心地よい骨が折れる音、血飛沫が舞い散ってオレの両手も染まっていた。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
「もう……やめてくれよ」