マサユメ~GoodNightBaby~
若林先生は教室に入るなり生徒が席に着くのも声をかけずに口を開いた。
「今から緊急の全校集会があります。
すぐに体育館に向かってください」
それだけ言ってすぐに教室を出て行く。
オレは一目散に若林先生に駆け寄った。
「先生!湊が来てないんです!湊は休みですか?」
オレの言葉に、違う「湊」という言葉に若林ははっとしたような素振りを見せた。
そして何かを隠すように表情を戻して小さく言う。
「今はとりあえず体育館に向かいなさい」
手から力が抜けていった。
若林先生の背中が少しずつ遠くなっていく。
携帯に着信はない。
ざわめいていた職員室。
異例の全校集会。
「湊・・・」
頭で何度も否定した。
あり得ないことだと切り捨てた。
だけど今目の前で起きている現実は、切り捨てた悪夢がただの夢ではなかったのではないかと思わせることばかりで、苦しいほどに不安が大きくなる。
「リム助大丈夫か?集会抜けて保健室行ったほうが」
「大丈夫・・・行くよ」
良太に声をかけられてようやく足が動き出した。
急な集会でぶつぶつよ文句をいう生徒もいた。
何かトラブルがあっての集会だろうと勘ぐる会話もあった。
そのどれもがどうでも良くて。
今はただ胸の内でざわつくこの不安を早く消すことだけを願っていた。