マサユメ~GoodNightBaby~
その瞬間だった。オレは携帯を拾い上げただけで文字盤やカーソルボタンには一切触れていないのに、画面に「選択したメールを削除しますか?」 と映し出された。
「ちょっと待てよ。何勝手に……!」
リセットボタンを連打しているけれど操作ができない。携帯は1人でに動き続け、リセットボタンを連打するオレなど居ないかのように振る舞いながら「はい」 を選択した。そしてゴミ箱フォルダへと画面が切り替わり、迷惑メールの1番上に表示された湊からのそのメールを選択して「このメールを完全に消去しますか?」と画面にテロップが出た。
「やめろ。消すな、待てよ!そうだ……電源切っちまえば」
オレは必死で電源ボタンを長押しした。メールが完全に消される前に電源を落としてしまえば、残るかもしれない。間に合え、ゴミ箱にさえあれば復元はできるんだから。間に合え。間に合え。間に合え!
「嘘だろ……?」
必死に電源ボタンを押していた親指の爪は真っ白で、どれだけ強く押し続けていたのかが分かるほどだった。だけど、そんな行動も虚しく、画面にテロップが表示された。「メールを1件完全に削除しました」 オレはがくっと膝が折れてその場に座り込んだ。
全身から力が抜けて、さっきより全然比較にならないほど弱く押した戻るのボタンが正常に作動して、ゴミ箱フォルダからメール一覧へと画面が切り替わった。
「なんだよ?…………なんだったんだよいったい!?」
携帯のトップ画面に表示されたデジタル時計は、ファイルを再生してからちょうど1分後を示している。幻覚でもなんでもない。今のは現実に起きたことなのだ。
「死んだはずの湊からメールが来て、湊が死んだ時の音声ファイルだけが添付されて、再生を終えたら1人でにファイルごとメールを消去した?」
たった1分と少しの間のことを振り返っただけなのに、オレは何もかもを認めることができなかった。
「そんなわけあるか!!あんな……湊、あんな苦しそうに死んだのか?あいつ確かに言ってた「止めて」 って。聞き間違いなんかじゃない。それなのに、それなのにオレは!!」
また湊を殺した時の感触が蘇ってきた。そして今しがた聞いたばかりの音声が相まって、より鮮明に、より生々しい感覚でオレが湊を殺したことを物語っていた。
「やっぱり、オレが……オレが湊を殺したんだ」
オレは笑っていた。狂ったように声を上げながら、壊れたように涙を流しながら大声で叫ぶように笑った。
「ちょっと待てよ。何勝手に……!」
リセットボタンを連打しているけれど操作ができない。携帯は1人でに動き続け、リセットボタンを連打するオレなど居ないかのように振る舞いながら「はい」 を選択した。そしてゴミ箱フォルダへと画面が切り替わり、迷惑メールの1番上に表示された湊からのそのメールを選択して「このメールを完全に消去しますか?」と画面にテロップが出た。
「やめろ。消すな、待てよ!そうだ……電源切っちまえば」
オレは必死で電源ボタンを長押しした。メールが完全に消される前に電源を落としてしまえば、残るかもしれない。間に合え、ゴミ箱にさえあれば復元はできるんだから。間に合え。間に合え。間に合え!
「嘘だろ……?」
必死に電源ボタンを押していた親指の爪は真っ白で、どれだけ強く押し続けていたのかが分かるほどだった。だけど、そんな行動も虚しく、画面にテロップが表示された。「メールを1件完全に削除しました」 オレはがくっと膝が折れてその場に座り込んだ。
全身から力が抜けて、さっきより全然比較にならないほど弱く押した戻るのボタンが正常に作動して、ゴミ箱フォルダからメール一覧へと画面が切り替わった。
「なんだよ?…………なんだったんだよいったい!?」
携帯のトップ画面に表示されたデジタル時計は、ファイルを再生してからちょうど1分後を示している。幻覚でもなんでもない。今のは現実に起きたことなのだ。
「死んだはずの湊からメールが来て、湊が死んだ時の音声ファイルだけが添付されて、再生を終えたら1人でにファイルごとメールを消去した?」
たった1分と少しの間のことを振り返っただけなのに、オレは何もかもを認めることができなかった。
「そんなわけあるか!!あんな……湊、あんな苦しそうに死んだのか?あいつ確かに言ってた「止めて」 って。聞き間違いなんかじゃない。それなのに、それなのにオレは!!」
また湊を殺した時の感触が蘇ってきた。そして今しがた聞いたばかりの音声が相まって、より鮮明に、より生々しい感覚でオレが湊を殺したことを物語っていた。
「やっぱり、オレが……オレが湊を殺したんだ」
オレは笑っていた。狂ったように声を上げながら、壊れたように涙を流しながら大声で叫ぶように笑った。