マサユメ~GoodNightBaby~
「あぁ……あああ」

オレは自分の顔を両手で覆って、そして冷や汗で全身がびしょ濡れになっていることに気がついた。

また、まただ。またオレは人を、湊だけじゃなくて榎本さんのことを殺した。

「うわぁぁぁぁあっ!!」

オレは布団も枕も目覚まし時計も、振り回した手に触れたものを弾き飛ばして暴れ回った。そうでもしなければ狂ってしまう。人を殺した。人をあんなに楽しそうに殺した。

すると、急に壊れかけのインターホンが鳴り響いた。

「……誰だ?まさか警察?」

肩で息をしながら、よろめく足を引きずってオレは玄関へと歩いていく。身体が重い。意識は混濁していた。

玄関の靴箱の上にある鏡に写ったオレはやつれきっていて、真っ青な顔をしていた。それはもう、自分でも情けなくなってしまうほどに。

覗き孔もない玄関の扉をゆっくりと開ける。そこに居たのは予想もしていない人物だった。

「おっすリム助!」
「リアムくんおはよう」

そこには真緒と良太が立っていた。

「良太、真緒……警察は?」 弱々しいオレの言葉をなんとか聞き取ったらしい2人は顔を見合わせていた。そして、二人同時に振り返って、全く同じセリフを同時に言うのだった。

「「そんなことより、何があったの!?」」
「リム助、お前その顔色尋常じゃないぞ?病院行くか?」
「昨日もしんどそうだったから良太と来てみたけど良かった。すごい心配したし、今も……」

2人の顔を見て声を聞いて、緊張していた身体から力が抜けて、オレはその場でへたりこんでしまった。良太が大慌てでオレの肩を掴んで担ぎあげて、2人がオレをベッドまで運んでくれた。

さっき暴れた惨状のままだったから、2人は少し動揺をしていたけれど、真緒がベッドを元に戻してくれて、その間良太は1人で、力の抜けたオレを支え続けてくれた。ゆっくりとベッドに寝かされて、2人が心配そうにオレの顔を覗き込む。

「何かあったんだろ?オレらに話せないか?」
「私たちリアムくんの力になりたい。リアムくんが苦しんでいるのなら一緒に……力を貸すから!」

2人の言葉は真っ直ぐで、温かくて、色んな感情が涙になって溢れ出した。高校2年の男が友達の前で泣き崩れるって、どんな状況だよ?でもなんだろう、恥ずかしいとかそんな気持ちはなくて、本当にただ2人の気持ちが嬉しかったんだ。

でも、だからこそオレはこの2人にだけは湊のことも、榎本さんのことも言うことはできない。

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