マサユメ~GoodNightBaby~
 オレは放課後に四組の教室を訪れていた。この高校では三年間クラス替えは行われない。オレは部活にも入ってないし、委員会関係の仕事にも参加していないかわクラスの人間くらいしか交流がない。他クラスなんて顔は見たことあるやつらの集まりでしかなかった。

 そんな中で四組には一人だけ特例がいた。

「川島ちょっと話良いかな?」

 四組の川島 省吾(かわしま しょうご)は唯一と言っても良い、オレにとって他クラスにいる友達だ。この高校の入試の時にたまたま隣の席になって、消しゴムを忘れた川島にスペアの消しゴムをあげたことで交流を持つようになった。とは言っても、良太や真緒のようにいつも一緒にいるわけでもないし、お互いに帰宅部であまり会う機会もないのだけれど。

「うおーリアムじゃん久しぶり。なんか・・・・・・大変みたいだなお前のクラス」

 川島は目立つ存在ではない。委員長の様に前に立つわけでもないし、特に勉強ができるとか、スポーツができるというタイプでもない。ただ、誰にでも平等に接することができて、しっかりと人の話を聞くから男女問わずに信頼されている高校生にしては珍しいタイプだった。

「うん、まあな」
「ま、立ち話もなんだし座れよ。そこ、俺の席じゃないんだけどな。がっはっは」
「川島の笑い方相変わらずだな」

 川島は大げさに豪快に笑う。入試の時も消しゴムを貸してあげたのをいいことに休憩時間には毎度話しかけてきて、そしてこんな豪快な笑い方をして若干の注目を集めていた。

「それで?話って?」

 オレは川島の前の席の椅子を借りて座った。周りを見渡すとまだ数人の生徒が世間話をしながら残っていた。この中に居るのだろうか?

「最近変な噂流れてるだろ?今日確かここのクラスのやつが呼び出しされてたよな?そいつらってどんなやつ?」

 川島は特段驚いた様子もなかった。そして淡々と話し始める。

「今ここには居ないけど、まあ普通のやつらだよ?呼び出されたのもたまたまあの話をしてる時に先生が通りかかったってだけで、あいつらが噂を流したり広めてるわけじゃないと思うし」

 川島の推測が合っているのなら、今日の昼に呼び出しをくらった生徒は噂話にくいついて盛り上がっていただけということか。

「川島から見てあの噂話を流したやつって誰か思い当たる?」 そのオレの突飛な質問に川島は例の豪快な笑い声で応えた。

「がっはっは。何?リアムはオレのこと探偵かなにかみたいに思ってくれてるの?笑えるね」
「いや、そうだよなそんなやつ知る訳ないよな・・・・・・」

 頼みの綱だった川島からも手掛かりが見つからないのであればオレはもうお手上げだ。そう思って立ち上がろうと椅子を引いた時だった。オレは思いがけない言葉に固まった。

「誰が知らないなんて言った?噂の出どころだろ?このクラスの女子だよ」
「・・・・・・・・・・・・は?」

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