マサユメ~GoodNightBaby~
夜が明けて金曜日。オレは川島の話から戸叶さんに話を聞くことを決めていた。川島に取り次いでもらうことも考えたのだが、真正面から堂々と話しかけた方が良いと判断した。

「おいリム助!何で勝手に登校してるんだよ?」
そう送られてきた良太からのメールを見ていると、オレが少し前から待ち続けていた下駄箱に目的の人物がやってきた。

「え、嘘……薬師くん?」

4組の下駄箱が見渡せる場所から、目的の人物が上靴を手にしたのを確認して、オレは近づいていく。その子はオレを見て少し頬を赤らめて、顔をふせた。

「戸叶さんだよね?ちょっと話したいことあるんだけど良いかな?」
「え……?あの、何で?」

何で?お前が湊や榎本さんの死を馬鹿にする様な噂話を流したからに決まっているだろ。白を切るつもりならオレの怒りを助長させるだけだぞ。

「友達の死を辱められた。って言えば伝わるよな?」
「えっ……それは、あの」

初めてオレは心の底から憎いと思いながら女の子を睨みつけていた。そんなオレの表情に戸叶さんの顔が引きつっていく。登校してきた数人の生徒がその様子を見て足を止めていた。

「ここじゃ話しにくいこともあるだろう?体育館裏で話そうか」
「は……はい」

戸叶さんは震える手で上靴を出したばかりの下駄箱に戻して、靴を取り出す。オレは手に持っていた靴を置いて足をねじ込んだ。その乱暴な所作が手早く靴を履いて移動したいことを暗に告げていて、それを察した戸叶さんは慌てて靴を履いて体育館へと歩き出した。オレもその後をついていく。

「あれ?リアム君?」
「へっ、リム助居たの?」

オレと戸叶さんが体育館裏へと消えていく時、調度校門をくぐった良太と真央がその様子を見つけていたのだが、オレはそのことに気づいていなかったのだった。
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