マサユメ~GoodNightBaby~
教室の扉を開くと朝のホームルームが始まる1分前だった。
「薬師くんギリギリだったね。おは……よ」
委員長は毎朝の日課の黒板を掃除する手を止めて、入ってきたオレにそう挨拶をしようとして途中で口をつぐんだ。
「おはよう委員長」
「あ、うん。おはよう」
無意識にも感情が顔や態度に出ていたのかもしれない。委員長が挨拶を言いよどみ、他の友達も挨拶さえはばかられる程には。
「おい、リム助なにが……」
「はーいチャイム鳴ったぞ。席につけー」
自分の席で盛り上がっていた良太が、そう立ち上がり言いかけた所で教室の扉が開き若林先生が出席簿を片手に入ってきた。良太は二、三度若林先生とオレを交互に見て席に着いた。
「今日は連絡していた通りに部活はありません、放課後は速やかに帰宅をして、くれぐれも学校に残るなんてことのないように」
そう、今日は記者会見を開く日だ。若林先生の目元には薄くクマが見えていた。きっとこの数日は心休まる間もなく湊と榎本さんのことで動いていたのだろう。自分の受け持ったクラスの生徒が立て続けに2人も死ぬ。その驚きやショックは計り知れないし、教師として負った責任はオレには想像することもできなかったけれど。
「湊……榎本さん……」
2人の机に供えられた白い花。強い日差しにうたれて、濃い影を机に写している。
結局のところ2人の死の真相は分からないままだ。学校の報告通り、警察の発表通りにただの自殺だったのか。
それとも、オレのこの手に残る感触が示すように殺されてしまったのか、それを確かめる術はどこにもなかった。だから、ほんの一瞬とは言えどこかでこれは悪い夢だったのだと思い込みたかったのかもしれない。
偶然にしてはタイミングが悪すぎたが、たまたま2人を殺す悪夢を見た次の日に2人が自殺をしただけだったのだと、そう目を逸らしたかったのかもしれない。そして、あんな夢はもう見ることは無いだろうと思いたかっただけだったのだ。
「薬師くんギリギリだったね。おは……よ」
委員長は毎朝の日課の黒板を掃除する手を止めて、入ってきたオレにそう挨拶をしようとして途中で口をつぐんだ。
「おはよう委員長」
「あ、うん。おはよう」
無意識にも感情が顔や態度に出ていたのかもしれない。委員長が挨拶を言いよどみ、他の友達も挨拶さえはばかられる程には。
「おい、リム助なにが……」
「はーいチャイム鳴ったぞ。席につけー」
自分の席で盛り上がっていた良太が、そう立ち上がり言いかけた所で教室の扉が開き若林先生が出席簿を片手に入ってきた。良太は二、三度若林先生とオレを交互に見て席に着いた。
「今日は連絡していた通りに部活はありません、放課後は速やかに帰宅をして、くれぐれも学校に残るなんてことのないように」
そう、今日は記者会見を開く日だ。若林先生の目元には薄くクマが見えていた。きっとこの数日は心休まる間もなく湊と榎本さんのことで動いていたのだろう。自分の受け持ったクラスの生徒が立て続けに2人も死ぬ。その驚きやショックは計り知れないし、教師として負った責任はオレには想像することもできなかったけれど。
「湊……榎本さん……」
2人の机に供えられた白い花。強い日差しにうたれて、濃い影を机に写している。
結局のところ2人の死の真相は分からないままだ。学校の報告通り、警察の発表通りにただの自殺だったのか。
それとも、オレのこの手に残る感触が示すように殺されてしまったのか、それを確かめる術はどこにもなかった。だから、ほんの一瞬とは言えどこかでこれは悪い夢だったのだと思い込みたかったのかもしれない。
偶然にしてはタイミングが悪すぎたが、たまたま2人を殺す悪夢を見た次の日に2人が自殺をしただけだったのだと、そう目を逸らしたかったのかもしれない。そして、あんな夢はもう見ることは無いだろうと思いたかっただけだったのだ。