もう一度、恋をしよう。
乗せられた奏多くんの手の平が、私の頭を優しく撫でてくれる。
「…優しいのは、奏多くんでしょ」
奏多くんの手の温もりを感じながら、泣きたくなる気持ちをぐっと抑えて、私は奏多くんに笑う。
「…美桜ちゃんは時々、面白い事言うね」
街灯に照らされた奏多くんの顔が少し赤くなっているように見えた。
「…それじゃ帰ろっか、美桜ちゃん」
「……うん」
私と奏多くんは、私の家まで歩き出す。
…別れを惜しむように、一歩ずつゆっくりと。
どちらからという訳ではないけれど…
自然と私と奏多くんの手は、繋がれていて。
「…じゃあ、また明日ね」
「…うん、また明日」
私の家のアパート前に着くと、奏多くんは手を解いて自分の家の方向へ歩いて行く。
私は奏多くんの後ろ姿が見えなくなるまで、その場を離れる事ができなかった。