もう一度、恋をしよう。
「おい、美桜!あの泣き虫、今日サボりか?」
「……稲葉くん」
先生との会話を聞いていたのか、同じクラスの稲葉くんはニヤニヤしながら私に近づいて来る。
稲葉 大和(いなば やまと)くん、私はこの男の子が苦手だ。
私よりも背が高くて、つり目の稲葉くんに見つめられると少し怖い。
でも…笑った時に見える八重歯が可愛くて、その整った顔立ちは私から見てもカッコイイほうだと思う。
顔だけじゃなく、運動神経抜群の稲葉くんは学年の女の子達から絶大な人気がある。
でも稲葉くんは…
私の事を勝手に呼び捨てにするし、いっつも意地悪。
奏多くんと違って、稲葉くんと話す時は未だに緊張する。
「奏多くんは…理由もなくサボったりなんてしないよ」
「どーだかな。昨日も隣のクラスの奴に泣かされてたし、学校に来れなくなったとか?」
「……そんな事ないっ!!」
私は初めて、稲葉くんに大声を上げた。
私の声は教室中に響き渡って、クラスの人達の会話がぴたりと止む。
稲葉くんは驚いた表情を見せたけど、すぐに眉に皺を寄せながら目を細める。