もう一度、恋をしよう。


「…だから!悪かったって言ってんだろっ!!」


頭を乱暴に掻きながら、今度は怒り口調の稲葉くん。


「…えーっと……」


そんな稲葉くんについていけなくて、なかなか言葉が出てこない。


「美桜、さっきから元気ねぇし…俺のせいなんだろ?」


相変わらず言い方はキツイけど、稲葉くんの表情は私を心配してるように見えた。

…私は正直、稲葉くんに対して良い印象を持った事がなかった。


だけど…今、分かった事が一つだけある。


「…もう、いいよ」


「……美桜?」


「……その気持ちだけで、十分だから」


…稲葉くんは意地悪だけど、悪い人じゃないのかもしれない。

嬉しそうに笑う稲葉くんを見ていたら、不思議とそう思った。
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