もう一度、恋をしよう。
「…ううん、してないよ」
ケンカはしてないはず。ただ奏多くんが勝手に機嫌悪くしただけだもん。
「…そっか。奏多ったら、怪我して不機嫌になってるのかしら」
桃子おばさんは深いため息をつくと、「美桜ちゃんのせいじゃないからね」と言って家の前で立ち尽くす私の背中を押して家の中へと入れてくれた。
「美桜ちゃん、今日はうちでご飯を食べていって。美月(みつき)には、連絡しておくから」
「……うん」
美月っていうのは、私のお母さんの名前。
私のお母さんと桃子おばさんは学生時代からの親友で、奏多くん家族と一緒に遊んでるうちにお父さん同士も仲良くなった。
「美桜ちゃんは、ゆっくりしててね」
冷たい麦茶が入ったコップを桃子おばさんはテーブル置いてくれる。
「ありがとう、桃子おばさん」
桃子おばさんは私に笑ってから、携帯電話を片手にキッチンへ向かって行く。
リビングに私一人だけになると、急にソワソワしてきた。
何度も奏多くんのお家には遊びに来ていたけれど、こんなに落ち着かないのは初めて。
奏多くんの様子も気になって、私は辺りを見渡して奏多くんの姿を探す。