もう一度、恋をしよう。
気になる人




朝っぱらから、こんなにテンパる事が今までにあっただろうか。




「…ど、どうしよう……」




朝の通勤、通学ラッシュ時。私は学校のパンフレットを片手に、道端のど真ん中で彷徨う。


何でこんな時に…っ!!



都内にある、北川(きたがわ)高校入学試験の当日。


この大切な日に限って私はあろう事か、道に迷ってしまった。



学校のパンフレットに書いてある地図と何度睨めっこしても、ここが何処かすら分からない。



辺りには地元では見慣れないような高いビルや、テレビや雑誌などで紹介されてたお店がずらりと建ち並んでいる。


そして何より、すれ違う人の多さに驚きを隠せない。


東京の街並みは、私の地元とかけ離れ過ぎている。


…田舎者の私は、完全にアウェーだ。


駅に引き返そうにも、右も左も分からなくてあたふたする。




「…こんな事なら、お父さんに送ってもらえば良かった……。」




送って行こうかとお父さんに言われたけど、地図を見ればすぐに分かるからって言って断った。
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