もう一度、恋をしよう。
ホテルで私の帰りを待つお母さんやお父さんに電話をかけようと思っても、今から受験が控えてるんだから当然スマホなんか持ってきてない。
携帯の有り難みを嫌というくらい実感させられる。
腕時計を見ると針が刻一刻と進んでいて、更に焦りが増す。
ーードンッ!
「……いたっ。」
どうすればいいか頭を抱えていると、すれ違いざまに前からやって来た人の肩がぶつかった。
その反動で、手に持っていたパンフレットを落としてしまう。
「…あ、ごめん。大丈夫?」
ぶつかったのは制服を着た男の子で、私と同い年くらい。
すらっとした体型にぱっちり二重が印象的で、耳に届くその男の子の低い声が私好み。
……って!何考えてんだ、私はっ!!
男の子は謝りながら、私が落としたパンフレットを拾ってくれる。
「はい、大丈夫です。
私の方こそ、ごめんなさい。よく前見てなくて……」
何故かドキドキして、その男の子に対して敬語になってしまう。