もう一度、恋をしよう。
「…うん、ありがとう。」
受験を前に緊張してないわけじゃないけど…私はただ、奏多くんを思い出してただけであって。
そんな事、出会ったばかりの人に言えるはずもなくて私は頷く。
「頑張ろうな、お互いに。」
「そうだね。」
私は最後に、男の子と軽い会話を交わして試験に臨んだ。
…奏多くんとお揃いの鉛筆を使って。
ーー……
「はーい!ペンを置いて、後ろから回答用紙を前に回して下さい。」
チャイムと共に先生の声が響き渡ると、教室に漂っているピリッとした緊張感が一気に解けていく。
…やっと終わったぁ。
私は深いため息をつきながら、回答用紙を前に回す。
受験問題は当然難しいものばかりで、埋まらなかった問題も沢山あったけど…精一杯頑張ったつもり。