もう一度、恋をしよう。
桃子おばさんは、お風呂場から持って来たであろう奏多くんの上着を抱えている。
「奏多!風邪引くから上着を着なさいって、いつも言ってるでしょう!!」
「……はーい」
桃子おばさんに怒られた奏多くんは、頬を膨らましながら渡された上着に腕を通す。
…奏多くん、可愛い。
そう言ったら奏多くんに怒られそうだから、心の中に留めておく。
桃子おばさんに怒られてふてくされた奏多くんをなだめるのが私の役目。
「奏多の機嫌が早く直るのは美桜ちゃんのおかげね」といつも桃子おばさんに感謝される。
「ほら、奏多くん!今日は奏多くんの大好きなカレーだよ!!」
「美桜ちゃんも、カレー好きだよね!」
「うん、大好きっ!!」
私が笑って答えると、奏多くんも一緒になって笑う。
奏多くんと笑い合ってる時間が楽しくて仕方ない。
「もうすぐ出来上がるから、ちょっと待っててね」
桃子おばさんは足早にキッチンへと向かい、しばらくするとご飯が炊き上がる音が聞こえてくる。
「…奏多と美桜ちゃんを心配する必要なかったみたいね」
桃子おばさんの言葉は、炊飯器の音に掻き消されて、私と奏多くんの耳には届かなかった。
奏多くんが髪の毛をドライヤーで乾かしている間に、私は先にカレーをご馳走になっていた。
リビングにある壁時計で時間を確かめると8時を過ぎていて、お皿に残っているカレーを掻きこむ。
「…ごちそうさまっ!」
私は奏多くんに対して余計な事を色々と考えていたせいか、予想以上にお腹が減っていてすぐにカレーを平らげた。