もう一度、恋をしよう。
…だけど本当は、それだけじゃない。
「美桜にはさ…ずっと好きな奴がいるんだよ。」
美桜を想う度に“アイツ”の存在を思い出すんだ。
もう二度と会う事がないかも知れない奴に、俺は今でも怯えてる。
「……奏多くんって人?」
「何だ…知ってるのか、アイツの事。」
「うん…前に美桜が話してくれて。」
真央は申し訳なさそうに声を小さくしながら言う。
「…そっか。真央には話すんだな。」
真央を羨ましいと思ったのは、初めてだった。
そりゃあ女友達だから気兼ねなく話せるだろうけど、美桜は俺にアイツの話を一切しない。
アイツが引越した翌日から、泣いてたのが嘘みたいに笑ってた。
俺が大丈夫なのかって聞いても、美桜は「心配しなくても大丈夫。」の一点張り。