幼なじみの溺愛が危険すぎる。
「普通はそうじゃない?」


「…よくわからないや」


それを聞いた沙耶ちゃんが目を細めてじっと私を見つめた。


「もしかして、りり花…
今まで好きになった人すらいない…とか?」


うっ……


「いない…のかも…?」


口をあんぐり開けて呆然としている沙耶ちゃんに、すごく申し訳ない気持ちになった。


沙耶ちゃん…
恋バナひとつできない私でホントごめん…


「あ、でもね、通ってた空手の道場に一人だけ全然かなわなかった人がいてね

あれは悔しかったなぁ…」


同じ空手道場に通っていた一つ年上の颯大(そうた)は、とにかく強かった。


何度も取り組みを挑んだけれど
一度として勝てたことはなかった。


「もしかして、その人がりり花の初恋?」


沙耶ちゃんがキラリと目を輝かせる。


「うーん…初恋とはちょっと違うのかな。
はじめて全くかなわないと思った相手っていうか。もう何年も会ってないし……」



「そっか…それじゃ、りり花の初恋はこれからなんだね!

そういうことなら協力しちゃうよっ!
彼氏の友達でいい人たくさんいるしっ!」


興奮気味にそう叫んだ沙耶ちゃんに笑顔を返した。


初恋かあ…
誰かを好きになるってどんな感じなんだろう…


ふと、小さい頃の玲音を思い出して頬がゆるんだ。


「でもね、小さい頃の玲音はめっちゃ可愛かったんだよっ。

女の子みたいな顔して、いつも涙で大きな目をウルウルさせててね。

私が見えなくなると"りりちゃんどこー"って泣いて追いかけてきたの。

最近はちょっとオッさん化してきたけど…」


「りりちゃん、なんの話?」


突然現れた玲音の腕に首をぐるりと絡めとられて


ぐぇっ……く、苦しいっ!!


「……な、なんでもないっ!ゲホっ」
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