幼なじみの溺愛が危険すぎる。
「じゃ、ママもう行くわね?」



「お母さん、お願いだから一緒に連れてって!」


スーツケースに手を伸ばしたお母さんの腕をがっしりと掴む。



「ほら、最近仕事が忙しくてなかなかパパと一緒の時間が取れなかったから。

こんな時じゃないと、ね?

りりちゃんも玲音くんとゆっくり楽しんで♡」



そう言って、お母さんは柔らかい笑顔とは裏腹にものすごい馬鹿力で私の腕を引き離した。



「玲音と2人きりで置いていかれると思うと全然ゆっくりできないよ。

お母さん、お願いだから置いてかないでぇ…」



「大丈夫、大丈夫」


軽く返事をするお母さんをじっと睨む。


「そんな根拠のない"大丈夫"なんて言葉、全然信じられないっ」



「だって、相手は玲音くんじゃない。なにを今更…

じゃ、りりちゃん、火の元には気をつけてね。お土産、たくさん買ってくるわね」


そう言ってお母さんは無情にもカラカラとスーツケースを転がして出かけてしまった。


ひどい……


ひどすぎるっ……


いつも仕事で私のこと放ったらかしなのに、旅行にも連れてってくれないなんて…。



しかも、玲音とふたりきりで3日間も留守番なんて……


なにをされるかわからない。






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