キミの心に届くまで


「おねーちゃん、何かあった?」



ベッド柵の隙間から、翼が小さな手を差し出す。



近くのパイプ椅子に座っていたあたしは、思わずその手を取って優しく握り締めた。



「どうして?何も、ないよ?」



ムリに唇の端を持ち上げて笑ってみせる。



「でも、悲しそうな顔してるよ?」



「え……?そんなこと、ないよ」



まだ世の中のことを何もわかっていないはずなのに、心の中を見透かされたようで一瞬ギクッとした。



「僕、ママに言うね」



「え?」



「僕はひとりでも大丈夫だから、お家に帰っておねーちゃんと居てあげてって」



「……っ」


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