キミの心に届くまで


そのあとしばらくして、翼は寝てしまった。



翼の言葉が胸に突き刺さったまま消えてくれない。


言い当てられて、今もまだ動揺していた。



ねぇ、翼はいつもそんな風に思ってたの……?


病気でツラくて大変なのに、あたしのことを考えてくれてたの……?


あたしは……あたしは。


翼のことなんてこれっぽっちも考えてなかった。


恵まれてるから、ガマンしなきゃいけないって。


ワガママを言って困らせちゃいけないって、自分のことばっかり考えてたよ。



「……っく」



ツラくて大変な翼の気持ちもわかろうとしないで、自分のことばっかり……。


あたし……あたしは。



こんな自分が大嫌い。



涙が次々と頬を伝って止まらなかった。


小さくて細い翼の手のひらは温かくて、丸裸になった心を包み込んでくれているよう。


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