キミの心に届くまで
だけどなんとか持ち直して、繁華街の中を足速に引っ張られた。
それはさっき片桐が歩いて行った方向と同じだったけど、この人混みの中では多分見つかることはないはずだ。
見つかっても、別にどうもしないんだけど。
校舎の中で話しかけるなっていうくらいだし、外で会ってもムシされるに決まってる。
何より今は、友達といるんだもんね。
あたしの存在なんて、知られたくないよね。
あたし達は友達っていうわけでもないし、ただ顔見知りっていう程度。
金髪の男は強引に人に当たりながら、人混みを掻き分けてどんどん進んで行く。
中には迷惑そうな顔をする人もいたけど、金髪男の威圧感に圧倒されて文句を言って来る人はいなかった。
ーードンッ
引っ張られながらキョロキョロしていたあたしは、思いっきり誰かの背中にぶつかった。
反動で少し後ろに飛んだあたしの腕から、金髪男の手が離れる。
そしてそのまま、道の脇で尻もちをついた。
「いってーな」
振り返ったその人は、怒りを露わにして睨みをきかせて来る。
だけど、あたしはその人を見てギョッとしてしまった。
「か、片桐……」
「お前……」