キミの心に届くまで


「やっ……だ」



胸を押し返そうとしてみても、女のあたしの力じゃビクともしない。



片桐はあたしの声なんか聞こえていないってフリをして、首筋に顔を埋め続けた。



柔らかな髪が顔に当たってチクチクする。



そして胸に手が伸びて来た時、背筋が凍るほどの恐怖を感じて涙がジワジワ浮かんで来た。



「や、やだっ……こんなの……やだ」



この時初めて怖いと思った。


やめて!って、心の中で強く思った。


怖くて怖くて仕方なくなって、気付くと体が小刻みに震えていた。


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