キミの心に届くまで
他人からしたらちっぽけに思われるかもしれないけど、初めて誰かに認めてもらえた気がした。
あたしはずっと……こんな風に誰かに優しくされたかったんだって、この時になってようやく気付いた。
バカだよね。
考えればわかることなのに、実際経験するまでわからないなんて。
大げさだけど、それだけで少しだけ強くなれた気がした。
「あ、それと。今後、俺のことを名字で呼ぶのは禁止な」
「えっ?」
じゃあ、なんて呼べばいいわけ?
「郁都って呼べ」
なんで……?
そう訊き返そうとしたけど、片桐はもうすでに立ち上がっていて。
「俺もお前のことを名前で呼ぶから」
そう言い残して立ち去って行った。