キミの心に届くまで


12月に入って寒さも厳しくなり、木枯らしが吹き荒れるお昼休み。


当然のごとく屋上に出るなんて無謀なことは出来ず、屋上の扉の前の踊り場で過ごすようになったあたしと郁都。



それでも暖房器具がないから十分寒いんだけど、唯一郁都と過ごせるお昼休みが毎日の楽しみになっていた。



アドレスと番号を教えてもらったけど、こうして毎日お昼休みに顔を合わせるから特に連絡をしたことはない。



「あ〜、さみー」



「カイロあげよっか?」



そう言ってブレザーのポケットからカイロを取り出し、郁都に向かって差し出す。



「いらねーよ。お前のがなくなるだろ」



さすがの郁都も寒さには耐えられないのか、学校指定のブレザーとセーター、ネクタイをして登校している。



それでもネクタイはゆるゆるで、制服の着こなしは校則違反しまくりなんだけど。



「2個あるから平気だよ、はい」


< 152 / 374 >

この作品をシェア

pagetop