キミの心に届くまで
悪い気はしないけど、なんだか気恥ずかしくてついつい断っちゃうんだよね。
それともうひとつ。
お昼休みは郁都と過ごせる唯一の時間だから、すずよりもそっちを優先したいっていうか。
会えると思うと胸が苦しくて、ドキドキしているあたしがいる。
ほら、今日も……。
屋上に続く階段を上り始めると、ドクンドクンとうるさいほど鼓動が高鳴り始めてる。
前まではこんなことなんてなかったのに、本当に最近変だよ。
「おせーんだけど」
屋上の扉の前の踊り場に着くと、郁都は不機嫌そうに唇を尖らせていた。
その顔はいつもの無表情じゃなくて、まるで子どものよう。
「ご、ごめん……っ!」
前までならこんな憎まれ口を叩かれても強気で言い返せていたのに、今はそれも出来ずにいる。