キミの心に届くまで


悶々とした気持ちを抱えたまま、時間だけが過ぎて行く中で郁都への想いはさらに募って行った。



廊下や玄関ですれ違ったり、購買で顔を合わせたりすることもあるけど『校内で話しかけるな』と言われた約束をあたしは忠実に守っている。



というよりも、守らざるを得ないといった方が正しい。



だって。


廊下や玄関ですれ違って目が合っても、郁都は何事もなかったかのようにムシして行ってしまうから。


その背中が話しかけるなと物語っている。


それはまるで、他人に対する態度と同じ。


心の距離が近付いたと思うのは、昼休みの短い時間だけ。


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