キミの心に届くまで

聞けない気持ち



少しだけ浮かれてはいたものの、それからも郁都との関係は特に変わらなかった。


郁都の気持ちが聞けると思ったけど、何も言ってくれることはなく毎日をただぼんやりと過ごすだけ。


あたしの気持ちを知っているはずなのに、何も言ってくれないから肩透かしを食らった気分だ。


どうして何も言ってくれないの?


ありがたくもらっとくって、どういう意味で言ったんだろう。



日が経つにつれて、掘り返して聞くのもどうかと思い怖くなっていく一方。


さらには校内ですれ違っても、態度は相変わらず冷たくて。


お昼休みだけは普通にしてくれるけど、肝心なことは何も聞けない。



あー、そっか。


郁都はあたしを傷付けたくなかっただけなんだね。


『ありがたくもらっとく』って言われただけで、浮かれていたあたしがバカだった。


なに勘違いしちゃってたんだろう。


あれは郁都の優しさだったんだよ。


迷惑なら、最初からそう言ってくれれば良かったのに。


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