キミの心に届くまで


さらに……。



郁都はやっぱり、時々遠くを見つめながら寂しそうな顔を見せることがある。


それが何を意味しているのかはわからない。


だけど、それを見る度に泣きそうになる。


いつもあたしは、唇を噛み締めながら涙を堪えるのに必死。


郁都の心の中には……誰がいるの?



「これ」



食べ終わったあと、あたしの目の前に郁都が何かの袋を差し出した。


手のひらサイズの小さなピンクの袋。



「なに?」



戸惑いながら首を傾げる。



「今日、ホワイトデーだから。お返し」



「えっ……?」



お返し……。


覚えてて、くれたんだ?


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