キミの心に届くまで


「んっ」



ゆっくり重ねられた唇に思わず目を見開く。


頭の中では何が起こったのか正常に処理しきれないのに、どんどん熱を帯びていく頬。


熱くなっていく体に心臓は破裂寸前だった。



唇に触れる確かな温もりに、胸が激しく締め付けられる。



郁都は目を閉じているけど、あたしにはそんな余裕なんてなかった。



目を閉じて、あたしとキスして……。


今、誰のことを考えてるの……?



そんなことを思うと、幸せなはずなのに涙が浮かんで溢れ落ちそうになる。


< 258 / 374 >

この作品をシェア

pagetop