キミの心に届くまで


返事をする間もなく、一方的に電話は切れた。



今から来るって……?


ど、どうしよう……。


どんな顔をして会えばいいの?


わからないよ。



電話を切ってから数分もしない内に、宣言通り郁都はやって来た。



その顔はなんだか不機嫌そうで、明らかに怒っていることがわかる。


だけどあたしは、初めて見る郁都の私服姿にドキドキしていた。


あたしももう少し、可愛い格好で来れば良かった。


なんて言ってる場合じゃないけど。



「何してたんだよ?」



「え……と、さ、散歩」



「はぁ?」



うっ。


よくよく考えるとおかしいよね。


カバンも何も持たずに、こんな時間に繁華街をウロついてるなんて。


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