キミの心に届くまで
「お邪魔、します」
郁都に続いて中に入る。
「こっち」
促されるままリビングに入った。
広いのに家具が少なくて、生活感もまったくない寂しいリビング。
テーブルとソファーがぽつんと置かれているだけで、テレビやダイニングテーブルは見当たらない。
「ここ、誰も住んでねーから」
不思議に思いながらキョロキョロしていると、郁都がコップを両手にやって来た。
「え……?」
誰も、住んでない……?
「もともとはジジイの家でさ。今は違うところに住んでるからほぼ空き家状態。高校に近くて便利だから、俺がたまに使うぐらいで」
「そ、そうなんだ」
へぇ。
ってことは、郁都の家は別にあるってことなんだね。